泉田良輔のブログ

テクノロジーアナリストの100%私見

戦術的ピリオダイゼーション理論入門。練習とトレーニング方法とは

サッカー関係者では知らない人はいなくなってきた印象もある「戦術的ピリオダイゼーション理論」。今回は、「FCバルセロナスクールの現役コーチが教えるバルサ流トレーニングメソッド」やサッカーダイジェストの記事でバルサの練習法に関して非常に有益な箇所を見つけたので、まとめておきます。

戦術的ピリオダイゼーション理論のコンセプト

戦術的ピリオダイゼーション理論(Tactical Periodization)はポルト大学スポーツ学部のビトール・フラデ(ビクトル・フラーデ, Vitor Frade)教授が約30年前に開発した理論です。

フラデ教授はサッカーを以下のように定義しました。

サッカーはカオスであり、かつフラクタルである

何じゃそれは?!というツッコミもあるともいます。金融では「カオス」は、意味不明なことが起きた時に冗談交じりに使います。フラクタルは、あまり使うことはないですが現象を表現する際に時折耳にする程度です。

カオスとは

カオスをロングマンの現代英英辞典で引いてみると、以下のようになっています。

a situation in which everything is happening in a confused way and nothing is organized or arranged in order

フラクタルとは

フラクタルはwikipediaでは、以下のように定義してます。

図形の部分と全体が自己相似になっているものなどをいう。*1

フラクタルとサッカーの関係は村松尚登氏がうまく解説してくれています。

全体のデザインである試合(=サッカー)と、中間のデザインであるグループの攻防と、細部のデザインである各選手の攻防はフラクタルの関係にあり、サッカーに含まれるすべての要素が全階層のあらゆる瞬間に含まれているのです。*2

また、サッカーダイジェストの記事では、フラクタルを軸に、システムやポジショニング、練習と実践の関係を以下のように説明しています。

監督が採用するシステムとそれに伴う各選手のポジショニングといった要素も含めて、全ての練習を戦術レベルでより実戦に近い形で行なうのが最大の特色だ。*3

つまり、練習というマイクロのシチュエーションを積み重ねていき拡張していくと実践、つまり試合になるという発想。

また、実践を細分化していくと練習でも再現でき、トレーニングする領域になるということです。

この発想は非常に重要です。今取り組んでいる作業がその先にどのようなものになっているかを想像できることは、全体のシステムやそのダイナミクスを理解できることにつながります。

また、市場になんらかしらのものを投入する状況を想定し、どのような準備をしておけばよいかということができるからです。

>>日本人に教えたい 戦術的ピリオダイゼーション入門

>>FCバルセロナスクールの現役コーチが教えるバルサ流トレーニングメソッド

プレーモデルとは

サッカーがカオスとフラクタルであるという前提に立った時に重要なものは、「プレーモデル」であると前出の村松氏が言います。

では、プレーモデルとは何かといえば、村松氏は以下のように定義しています。

そのチームが目指すサッカーとしての全体像、または最終目的を意味します。チームを率いる監督が掲げるチームの理想像と考えれば、理解し易いでしょうか。

さらにそのプレーモデルは、サブコンセプト、サブサブコンセプトに分解できていくのだそうです。

プレーモデルとシステムズエンジニアリング

このプレーモデルの考え方はシステムズエンジニアリングと全く同じ考えですね。

分解を重ねてサブシステムにし、それをさらに分解し最後はLowest Configuration Item(LCI)にまで分解する。また、それらをくみ上げながら全体の出来上がりを確認し、バリデートしていく。

まさに同じコンセプト。戦術的ピリオダイゼーションはまさにシステム、そしてアプローチがエンジニアの発想ですね。したがって、そういう教育を受けていない監督には当然ながらピンと来ないでしょうね。

サッカーにおいても、サブコンセプト、サブコンセプトを繰り返し確認しながら試合をイメージしながら、実践に持ち込むということでしょうか。

まさに、「サッカーはサッカーをすることによって上達する」。

プレーモデルの前にゲームモデル?!

戦術的ピリオダイゼーションを調べているうちに、それらを構成する様相がいくつかわかりかねてますが、プレーモデル以外にもゲームモデルというのを見つけました。構成される要素は以下の様です。*4

  • Players' Capabilities(選手の能力)
  • Club's Structure & Aimes(クラブの構成と目的)
  • Club & Country Football Culture(クラブとその国のサッカー文化)
  • Moments of the Game(試合の局面)
  • Structual Organization (組織構造)
  • Coach's Ideas(コーチのアイデア)
  • Principles & Sub-principles of Play(プレーの原則とサブ原則)

というような具合です。観る感じ、ゲームモデルはプレーモデルよりも上位の概念のような気がしますが、もしかしたらパラレルかもしれません。

Moments of the Game

さらにMoments of the Gameも同じ資料の中でさらに細分化しています。

  • Offensive Organization
  • Transition from Defend to Attack
  • Deffensive Organization 
  • Transition from Attack to Defend

というような具合です。さて、プレーモデルはどこにポジションするのでしょうか…。

繰り返し練習することでのメリット

その一方で、戦術的ピリオダイゼーション理論の肝は、"trained(訓練される)/learned(学習される)"だということで、経験値が重要といっています。

つまるところ、この理論の一連の練習を反復して繰り返していくうちに、実際の試合において目まぐるしく変わる局面ごとで、チームとしてどのような動きをすればいいかを、各選手が理解できるようになるわけだ。*5

監督の指示を理解できない選手も多いのでしょう。これはサッカーに限りませんが、これが現実。

これを採用するコーチたちは、「どうしたらできるかを分からせる」というニュアンスで語る。*6

サッカーに限らず、試験勉強にも役立ちそうです。

また、記事を執筆するアナリストやジャーナリストも読者が読む時間帯やペースに合わせて記事を書いてみるもの面白いかなと。大体、夜に書くのが普通でしょうから。

アナリストも決まった時間に集中して書いてみると結果は違うのだろうか。検証してみたいですね。

もっとも大きな特徴は、練習時間が試合と同じ90分間に設定されていること。ポイントはブレイクタイムもほとんど取らないことで、常に高いインテンシティーを保つ。*7

トレーニング方法について

トレーニングの大半を占めるグループ練習は、ショートパスによるポゼッション、ロングパスを交えたカウンター、4バック、3バックなどシチュエーションごとに行なう。その際に大切なのは、チームが掲げるプレーモデル。実戦を想定してポジショニングを事細かに修正しながら、各選手に局面ごとの役割を理解させるのだ。*8

ポゼッションの持つ意味

しかし全ての面においてより実戦に近い練習を導入するL・エンリケの場合は、そうしたポゼッション練習の際にも、より試合に即した形で選手たちを配置し、いかにオープンスペースを有効活用して相手ゴールに攻め込むかという点を重要視する。ポゼッションを「目的」とするのではなく、あくまでも「ゴールを奪う手段」として意識づけするためだ。*9

これは川崎フロンターレ・風間八宏監督も同じことを必ず言いますね。ボールを使わない練習はしないというのも同じ。

もちろん、川崎Fが調査して取り込んだともいえますが、強いチームの練習法の共通項ともいえます。

目指すはいつも同じだがタテへの速い攻め

で、結局は何を目指すかといえば、タテへの速い攻め。守備を崩せる可能性が高くなるわけですから、早いタテへの攻めができるのには越したことがない。

最後に

戦術的ピリオダイゼーション理論自体は30年以上前に開発されたものだし、モウリーニョがメディアに向けて話をしているのが2000年の前半から中盤であることを考慮すると、この理論自体はすでに10年以上練られた状態にあるわけで、日本サッカーがこれらを自分の血なり肉にするためには、周回以上遅れている印象があります。

ただし、川崎フロンターレでも風間八宏監督はこのコンセプトにかなり近い練習をしていたようですし、それを5年もかけて積み重ねてきたことを考えると、グローバルスタンダードの土俵に立つためにはこのコンセプトを知っていて実行できるというのがまずはスタートラインに立つことかなと思われます。

サッカーダイジェストの記事も超面白い記事だ!とおもったらやっぱりというか、翻訳でした。日本のサッカー記事の文学的表現を使ったレポは冗長的で字数のわりに中身がないので、こういう記事をたくさん読みたいものです。

FinTech雄レンディングクラブの株価はダダ下がり-決算とビジネスモデル(仕組み)

FinTechの雄とされているレンディングクラブ(Lending Club Corp.)ですが、実は上場来で見ると株価はダダ下がりです。ここまででは、いわゆる上場ゴール的な扱いを受けてしまうのですが、不祥事によるCEOの退任などもありました。今後再度株価は盛り上がることはあるのでしょうか。

レンディングクラブCEO辞任

ブルンバーグの報道は以下の通り。

事情を知る匿名の関係者によると、問題になったのは米ジェフリーズ・グループに対するプライムローンに近い2200万ドル(約24億円)の融資債権の販売。後になってレンディングクラブが買い戻したため、ジェフリーズに損失は生じていない。レンディングクラブは発表文で、この販売が「投資家の具体的な指示に反して」いたと説明した。*1

レンディングクラブ上場来の株価

下のチャートを見てみると、いわゆる右肩下がりのチャートともいうべき状態です。2016年5月にも株価は暴落しています。これは2016年第1四半期(Q1)の決算で当期純利益が前四半期で減益になった決算をネガティブに株式市場が受け取ったものです。

加えて、不祥事による創業者兼CEOが辞任するという事態。通常であれば、創業者が退任するというのはベンチャーであれば異常事態といえます。株価は大きく下がっても仕方がないといえます。

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その後、株価は反発するものの、再び下落基調となっています。上場来高値が30ドル近いことから現在の株価はその6分の1程度です。時価総額も現在は2000億円程度といったところでしょうか。

レンディングクラブの決算

当期純利益で見ると、結構凸凹していて、黒字になったかと思えば、大赤字になったりして、安定していません。2016年Q1は対前四半期で減益になったことを株式市場は嫌気したようですが、2016年Q2は大赤字です。

その背景は、販管費のその他項目、のれんの減損などが響いた結果です。のれんの減損はキャッシュアウトはしないので、除いて考えてあげてもよいですが、基本的には赤字体質ですね。

今後、貸し付け審査などに伴うコストもこれまで以上に必要となってくることから、どの程度の費用増(比率を含めて)になるかにも注目です。

レンディングクラブの貸付け規模

レンディングクラブをスタートして以来のローン・オリジネーションは2016年Q2までで約2兆円。これをメガバンクと比較して小さいという人は多いでしょうが、2011年スタートということを考えれば大したものだと思います。

ただ、2016年Q2のローン・オリジネーションは1955百万ドルということで、対前四半期では減少しています。まさに ❝Misstep❞ というところですが、仕方がない決算といえます。

さて、この状態が2016年Q3以降どう出るか。

レンディングクラブの案件出資者は、2016年Q2時点で、Managed Accountsが35%、銀行が28%、その他機関投資家が20%、個人投資家などが17%という状況。*2

今後、金融機関や機関投資家がレンディングクラブの融資の質に対してどれくらい敏感に反応したかが問われるかと思います。

ところで、レンディングクラブの投資家層をみると、完全にシャドーバンキングの状態ですね。

レンディングクラブの価値

基本は世界中で金利、利回りが消失した中で、リスクを取りつつも利回りが存在している世界(投資対象・金融商品)を提供していること自体が価値があると思いますが、いかがでしょうか。

Lending ClubのIR(決算説明会)資料では、以下のような説明になっています*3

借り手は13.8%の利払い、貸して(投資家)は6.9%のリターンということで、貸し手にとっては夢のような世界です。

借り手も、従来の銀行では、20%以上の利払いが必要なことから、レンディングクラブを使うことでメリットがあるというものです。

つまり、レンディングクラブは利払いと投資家への戻し分のスプレッドを抜けるというモデルになります。

銀行のように貸し出しと借り入れの非常に薄いマージンで勝負していることを考えれば夢のような世界ですが、意外にマーケティングコストなどがかかっており、さてマッチングの実際がどうなのか気になります。テクノロジーで解決しているというよりは、人間を介していたら何がFinTechかも分からなくなってしまいます。

レンディングクラブのバランスシート

2015年末のバランスシートをアニュアルレポート(10-K)から見ていきましょう。*4

総資産は5793百万ドル、つまり約6000億円。そのうち、株主資本が1041百万ドル(約1000億円)。まあ、金融機関らしい構成です。

まだ累積損失が若干残ってますね。

時価総額が2000億円で、株主資本が1000億円なので、PBRは約2倍。JPモルガンやシティといったメジャープレーヤーのPBRが1倍やらブック割れといった水準を考えると、赤字企業ながらまだ期待されているという状況です。

まとめ-今後のレンディングクラブ

いかがでしたでしょうか。FinTechの雄の株価がこの調子だと心もとないですが(小商事以前も含めて)、米国の利上げ後の世界で、引き続きレンディングクラブの扱う投資対象が投資家に施行されるのか、スプレッドの動向がどうなるかは気になるところです。

株式市場は昔のようには楽観的には見てない様子。

風間八宏川崎F監督が2016年シーズンで退任…ポスト・ハリル日本A代表/五輪代表監督でもなくグランパスか

いつかこの日が来ると思ってましたが、とうとうこの日が来てしまいました。サッカーで5年間も同じチームで監督をやるということ自体があまりありないことでしょう。今回は風間八宏監督が今後どうするのかについて考えてみたいと思います。【2016年11月21日更新】

名古屋グランパスへ移籍?!

もともと川崎フロンターレ後は五輪代表監督かという話もありましたが、な、な、なんと名古屋グランパスへの移籍が濃厚との報道が出ています。

正直、J2に降格する名古屋グランパスに何があるのかは不明です。また、何年契約かは不明ですが、一旦はクラブチームの監督を続ける様子です。

ただし、2016年11月19日放送のテレビ番組「Foot X Brain」に出演した風間八宏監督に近いジャーナリスト木崎伸也氏の口は重たく、何かを感じさせます。

元Jリーガーの三浦淳宏氏の「なぜ風間監督は(川崎Fを)辞めるのか」という質問に対して、回答に非常に時間がかかりました。また、その回答も風間監督のこれまでの発言を繰り返したような内容で新鮮味がありません。気になります。

サウジ戦でハリル更迭を見込んでいた?!

完全な憶測ですが、先日の2018年のロシアワールドカップ最終予選の対サウジ戦で日本A代表ハリルホジッチ監督の続投が決まり、更迭がなくなったために同時に今のタイミングでのA代表監督はなくなったということを見越して名古屋グランパスで決めたように見えなくもありません。

風間監督は実際に日本を世界に置いてみてどう見えるかというのをよく発言しています。

必ず海外が面白いという訳では無いですし、海外から何かを学ぶというのはいつも言っていますけど、もう必要が無いんじゃないかなと思いますので、我々独自のもの、ペトロヴィッチさんも外国人とは思っていないです。監督の一人の仲間だと思っていますし、他の外国人監督もそうですし、自分達が日本人という選手が中心の中でどんなサッカーを作って、どんなサッカーを見せられるのか、今日はサポーターもあれだけの雰囲気を作ってくれましたし、恐らく外国でもそう簡単には無い雰囲気だと思います。*1

個人的には、A代表&五輪代表兼任も見たかったのです。そうした可能性を風間監督が見ていたとすれば、その可能性もなくなったというのであれば、とりあえずグランパスで決めたというのもわからなくもないです。

名古屋グランパスを世界に通用するビッククラブにしたい!!!

もう一つ考えられるのは、風間監督が名古屋グランパスの今後ビッククラブになる可能性に賭けたというビジネスマン、いや投資家という視点です。

名古屋グランパスは今や、トヨタ自動車の子会社です。トヨタ自動車の潤沢な資金力をバックにしていれば、金銭面で面白いことはできそうです。

川崎Fには5年もいたわけですから、名古屋グランパスで長期政権を敷けるとすれば、面白い展開も期待できそうです。トヨタ自動車に「日本でも、バルサやレアルようなビッククラブを作りたい」と口説かれたら、なんだか現実味がりますよね。

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その一方で川崎Fは風間八宏ロス

川崎Fはこれ以上風間体制を続けることでチームにどのような変化を付けることができるのかという点に関し、フロント及び監督視点に立つと、まあ風間監督のいうように「5年で一区切り」というのは仕方ないかなと。

ただし、このタイミングでの発表は難しいですね。CS、天皇杯も残されているので、どうしてもそわそわしてしまいます。

正式発表は10月12日

11日も川崎フロンターレ(川崎F) の練習場である麻生グラウンドには多くの大勢の記者が来ていました(なぜか中山ゴン氏、鈴木隆行氏などもいた)。そこで発表があったのではと思います。

個人的にもいろいろな変化があった2012年という同じタイミングから、2016年のここまで本当に楽しいサッカーを見せてもらったという感じで、感謝しかないです。

ということで正式に発表があり、風間八宏監督が以下のようにコメントしています。

このたび、今季限りで退任することになりました。川崎フロンターレに監督として就任し、選手達が成長し、個性的なチームになることが出来たと思っています。それにはすべての条件が揃わなければいけない。簡単なことではないですが、ファン・サポーターをはじめ、すべてのフロンターレに関わる皆様に支えていただきましたこと感謝しております。まだ戦いは続いていきます。今まで通り、目の前の1戦1戦に全力を注ぎ、選手達、スタッフ、そしてすべてのフロンターレに関わる皆様と共に残りの試合に全力を尽くしていきたいと思います。ありがとうございました。*2

まずは2016年シーズンを勝ちで終えたい

勝敗の結果はともあれ、風間サッカーの戦略と戦術がはっきりしたサッカーはプロセスを楽しむという点では最高のエンターテイメントでした。2016年シーズンの残り3節と天皇は、そして何はともあれCSで優勝できれば本当に最高です。

今シーズンで風間体制が最後という事実をチームとしてさらに一つになるきっかけになればと思います。

残り3試合は、退場気味!の大久保嘉人選手が得点をすることかと。エースが得点をすると勢いが変わるのになぁと思っているところにブログの更新が。タイミングを見切るのはさすが。

マリノス戦をスタンドから見てたら、13のユニフォームを着ているサポーターが見えたんよね。俺、試合出ないのに、申し訳ない!!残り試合は、それを着てることを自慢できるようにしないと。*3

ここからのポイントは2つ

さて、問題は過去ではなく未来です。個人的には次の2点に関心は移ります。

  • 川崎Fの後任監督を誰にするか
  • 風間八宏監督の今後の進路

川崎Fの後任人事

風間監督はユニークなサッカーをしていたので、そのまま引き継ぐということになれば内部昇格でしょう。鬼木コーチの名前なども上がっています。その一方でその監督がチーム内で指揮をする状態にいるかがポイントかと。===>その後鬼木コーチが内部昇格発表。

後任は未定ということですが、次の監督に求められるのは若手の起用とそのコア化。中村憲剛選手や大久保嘉人選手も中心人物とはいえ、年齢的にも次の主力選手が必要。

大島僚太選手や小林悠選手がその役割を担いつつありますが、今回の日本代表戦で活躍してしまうといずれ海外チームに移籍してしまうこともあるでしょう。

また、目先でいえば中村憲剛選手や大久保嘉人選手などベテラン組の心をつかめるか、なども気がかりです。===>大久保選手がFC東京に移籍。

それ以前に、ベテラン組を移籍させないでキープできるかも肝要ですね。

いずれにせよポスト風間監督探しは楽ではなさそうです。

風間監督の次の展開-さあゆけ日本A代表兼五輪代表監督

東京五輪代表の監督にも名前が浮上しています。個人的には風間五輪代表監督を見たいです。

ただ、風間サッカーを代表チームで浸透させるプロセスは時間も含めて簡単ではないでしょう。そこは風間語録よろしく「常識や先入観を疑う」ということでチャレンジする価値はあります。

日本代表も既に監督が外国人というだけはなんの魅力を感じませんから、そろそろ代表監督を戦略を持った日本人にすべくその準備をし始めたらよいのではと思います。

風間監督がJリーグでしっかり活躍する選手を代表で活用し、国際大会で勝利すれば、Jリーグの日本人選手の評価は高まり、Jリーグの価値そのものが上がります。

これはJリーグをより国際化させるためには必要不可欠な作業です。

現在の欧州組のバリューアップに取り組んでものりしろは限定的

本田や香川、岡崎選手といった顔ぶれは既に欧州リーグでプレーしブランドを確立した選手であって、これ以上の市場価値拡大は彼らが各クラブチームでどう活躍するかに依存しています。彼らを使うというのは代表監督からすれば安パイに過ぎないかと。

私がJリーグの市場価値を上げなければならない立場であれば、日本人選手の良さをしっかり分析でき、かつその伸びしろを試合を通じて伸ばせる代表監督を選ぶと思います。つまり、今後より高値で日本人の海外では無名選手を海外に輸出するであれば、発掘と育成という作業が避けられません。

風間監督を五輪も含めて代表監督にしたいというのはそんな思惑も透けて見えてきます。日本のサッカー協会がとりうる戦略としては悪くないと思います。

まとめ

ということで、風間八宏監督は川崎Fの監督としては2016年が最後になりそうで非常に残念ですが、他クラブチームに行くとかではなく、五輪ひいては代表監督になるべく、「ステップアップ」してほしいものです。

川崎フロンターレGKの新井章太選手の魅力とは

川崎フロンターレGKの新井章太選手の魅力は何といっても明るさとレジリエンス力。

2016年は韓国代表のチョン・ソンリョン選手がフロンターレに加入し、ベンチを温めることが多い。

ただ、ソンリョンが代表に選出されてチームから離れたり、怪我をしたときにやはり新井選手が準備してくれているかどうかは結果としてやはり重要だったというのが多くのサポーターが感じていることだろう。【2016年10月30日更新】

「神ってる」セーブの新井章太選手

結論としては、鹿嶋(茨城県立カシマスタジアム)まで行った甲斐がありました。

ただし、前半から川崎フロンターレの攻守はちぐはぐで、見ている方からすると質的に「ちょっと、ちょっと」と突っ込みたくなる内容ばかり。子供にもやじられる始末。再三自分たちのミスから決定的なピンチを招くという展開。

寒いからか(これは鹿島も同じはず)、なんかの緊張からか足にボールがついていない感じによるミスが多い、全体として我慢の展開でした。

ただ、新井章太選手の神がかり的なセーブというよりは精神の安定がもたらすともいえる落ち着いたセーブにより、再び完封勝利。決定的な場面でも最後までじれずに動かない姿勢は、神がかりというより日頃の練習の成果のように見えます。

相手を最後まで見据えて飛びつかない自信のあるGKぷりは頼もしい!

試合終了後、クルマで帰路に就こうとしますが、大渋滞。北浦を渡るのに実に2時間。

でも行った甲斐ありました。

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新井章太選手は無事復帰!きっちり抑えた10月22日対広島戦

2016年2ndステージの第15節、対サンフレッチェ広島戦。先日の横浜Fマリノス戦で負傷しての復帰戦。待ってました。

前半はGK前のDFのボールさばきの危うさ、中盤でセカンドボールがなかなか拾えない。またサンフレッチェの高い位置でのプレッシャーからMF陣がDFラインまで下がらざるを得ない展開。結果、何度もピンチがありましたが、新井選手ががっちり抑えてくれました。

後半も、ゴール前での処理も丁寧にさばいてくれた結果、完封。短い時間で、またきっちりともどってこれたというのはまたしてもレジリエンス力。

ちなみに塩谷選手のFKには物言いがついています…。反対側のゴール側だったので見えず。*1

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フロンターレの魅力は「等々力劇場」だけではない

川崎フロンターレの魅力を「等々力劇場」と呼ぶことは多い。ただし、それは正味90分の試合についてである。実はその「等々力劇場」を面白くさせるもっと長編のストーリーが裏で展開されているのではないかと最近よく考える。それは何といっても各選手のレジリエンスではないかと思う。

大久保嘉人選手もJリーグで3年連続得点王という偉業を成し遂げてきたわけだが、フロンターレに移籍する直前のヴィッセル神戸ではフロンターレ加入後に見せた得点力を示してきたわけではない。求められる役割がMF寄りだったというのもあるが、フロンターレに加入後に誰が3年連続得点王になると予想したであろうか。

大久保選手は2016年は自分の得点にこだわるというよりもチームとして自分がどう活かせるかという点に意識がいっているように思う。ただ、個人的には大久保選手の得点シーンが見たいし、それが一番チームが勝つ可能性が高いと思う。それだけではダメだという危機意識が大久保選手はより強くなっているのだと思うが。

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大塚翔平選手のレジリエンスも然り。ボール扱いが抜群にうまい選手であることには以前から変わりはないが、フロンターレでのパスをつないでボールを支配し、相手の動きの逆を取るというサッカーにしっかりはまった。トライアウトを受けて加入したとは思いえない活躍ぶりだ。

大塚選手には、個人的にはパサーやくさびを入れる役割だけではなく、前を向いてシュートを決める挑戦をもっと積極的にしてほしいなと。

新井章太選手のレジリエンス

そして、フロンターレの選手のレジリエンスを語る上で外せないのがGKの新井章太選手。ヴェルディ後にトライアウトを受け、フロンターレに加入。2015年シーズンには正ゴールキーパーの座を獲得するが、2016年には再びベンチを温めることが多くなる。

普通の選手であれば、せっかく正GKのポジションを獲得したのに、外部から新たに獲得されたのではやってられないと「腐る」のが普通だ。ただ、そこは新井選手の場合には違ったよう。

俺、一生、腐らないですね*2

大久保選手と練習することも多く、「日本で一番うまい選手と練習しているのでうまくなるのは当然でしょう」という説明は妙に納得してしまう。そしてそれが真実なのだろう。

アクシデント

2016年9月25日はソンリョンが怪我ということで、新井選手がリーグ戦でスタメン。

多くのサポーターはカップ戦での新井選手の動きを見ていたので、おそらくはいよいよ来た!という気持ちと2015年シーズンと比べると試合数の少なさを考えると不安に思っていたかと思う。

いざ試合が始まってみると、新井選手の安定した守備、そして攻撃陣が着実に点数を積み重ねたことで多くのサポーターは今日の試合は大丈夫と安心して見れていたと思う。

ところが、守備中のアクシデントとその後のGK交代劇。そして90分での2失点。最後は小林悠選手の決勝弾。忘れられない試合となった。

守備中に谷口彰悟選手との接触で脳震盪

「なんでマリノスと試合してんの?」
試合中、新井の言動の異変に気づいた田坂がドクターに伝え、新井が担架に乗せられてピッチを退き、高木駿がピッチに入った。*3

田坂選手が気づいたのか…。接触後からしばらくプレーしていたと思う。本当によく立っていたかと思う。本来はもっと早い段階で交代しているべき状況だったということだ。

新井選手をはやくフィールドで見たい

怪我で出場ができな選手は新井選手ばかりではない。満身創痍のフロンターレ。MFの田坂祐介選手が3バックの一角に入っている状態だ。ただ、GKは特殊なポジションで出場数はおかれている立場によって大きく異なる。

新井選手の復帰がチームの守備の安定力には欠かせない。CSまで含めると優勝するまでにはまだ数試合、天皇杯も残っている。本当に早く回復してほしい。

多摩川エコラシコで新井選手が子供に優しく話し続けてきてくれたことをおそらく一生忘れない。

個人とチームのレジリエンス

最近、負けてはいけない試合で負けがあるが、これもCSを面白くするための演出と勝手に前向きにとらえて騒がずじっくり待つことに。これもチームのレジリエンスが問われることになると。

そう、「等々力劇場」には個人とチームのレジリエンスがいつも存在している。すごいやつがいつもすごい結果を残すという事実よりも、くじけても継続して続けることで最後にすごい結果をもたらすというストーリーに多くの人を引き付けているのではと思う。

シャドーバンク・バンキングとは。問題は中国だけではない。規制をどうするか。日本はどうなるか

シャドーバンクは理財商品を中心に中国だけで問題になっているような印象があるが、実際はそうではない。我々が日頃投資をしている金融商品により引き起こされるシャドーバンキングもある。ここでは、シャドーバンキンクの意味と現在注目の集まるシャドーバンキングについてまとめてみる。

シャドーバンクとシャドーバンキング

そもそもシャドーバンクとは、その名の通り金融当局の監督下になく規制を受けない、もしくはその監督や規制の程度が弱い金融機関を言う。

なぜシャドーバンクが問題になるのかといえば、通常の銀行(バンク)は当局の監督のもとに信用創造を行うからである。これがシャドーバンキングとなる。

預金や決済機能がないシャドーバンクにより信用創造に近い機能を実現することができると金融当局の監視が届かない領域が生まれてしまう。結果、その領域がバブル的な状況や流動性に関して問題が生じてもそもそも監督が行き届いていないため当局によるコントロールが効きにくくなる。

ハイイールド債の投資信託はシャドーバンクか

果たしてシャドーバンクが信用創造に近い役割を実現することは可能なのであろうか。現状起きているシャドーバンク問題は以前から取り上げられる中国の理財商品だけではない。

たとえば、日本の個人投資家に人気のあるハイイールド債のファンドなどもその一つだ。企業が金融機関からの借入ではなく、社債を資本市場で発行することで資金調達をし、財務レバレッジをかける状況がそうだ。

企業からすれば、財務上は借入を金融機関から資本市場に代えたにすぎないが、その資金の出し手が当局の監督下にある銀行からその監督の度合いが弱い投資信託やETFが取って代わることで、投資信託やETFがシャドーバンクとしての姿を見せることになる。

ドイツ証券の村木正雄アナリストは、2016年10月号の証券アナリストジャーナルの中で、グローバルで低金利となることで利回りを求めて少しでも利回りのある金融商品を探し求める方向にあることと、企業が投資家の要求に応じて(ROEを高めるため)債務の比率を上げてきたことなどを指摘しつつ、いつでも解約できるとしているオープンエンド型投資信託のRunリスクについて指摘している。

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そもそもが世界中が低金利・マイナス金利下で利回りを求める

ネット証券で人気のある投資信託ランキングを見れば、グローバルや米国中心のハイイールド債やREITの投資信託が日本の個人投資家に非常に人気だということは一目でわかる。

これは個人投資家が(為替リスクを取りながらも)利回りがある程度確保できるということと定期的な配当があるからであると考えられる。

日本はマイナス金利下で個人投資家も資産運用の選択肢が狭まっている。資産運用に困っているのは何も機関投資家だけではない。シャドーバンキングが資産運用難の結果であるということもいえ、量的緩和を続けざるを得ない各国の金融政策の裏返しともいえる。

突き詰めれば流動性

では、金融政策の裏返しであれば、シャドーバンキングがすべて肯定されるかといえばそうとも言えないであろう。

そもそもハイイールド社債などは流動性に関して万全かといえばそうではない。何らかしらのきっかけでオープンエンド型投資信託に解約が殺到すれば、債券に関して売却がスムーズに行われないような場合には基準価格がスムーズに算出されないような状況も起こりうる。

もっとも怖いのが、投資信託を購入している個人投資家が自らが投資している金融商品が、外国資産また投資先が社債であるということが十分に認識していないとすればどうであろうか。そうしたことになればさらに混乱を招く可能性もある。

シャドーバンキングの金融資産に占める比率

さて、シャドーバンキングを定量的に把握しておきたい。日本銀行の2015年7月のレポート

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j10.pdf

によれば、実は米国とユーロ圏(英国を除く)の比率が高い。中国が問題かのように思われるが、実は問題は先進国だ。

米国ではシャドーバンキングの比率が銀行部門を上回っており、金融資産に占める比率は30%を超える。

一方、ユーロ圏は銀行部門の占める比率が50%程度あるものの、シャドーバンキングの比率は35%に近づく勢いだ。

日本はどうかといえば、シャドーバンキングの金融資産に占める比率は10%程度である。

こうしてみると、実は結局リーマンショック後の資産運用及び欧州通貨危機後の金融政策をそのまま引きずっているようにみえるが、どうであろうか。

シャドーバンキングのグローバルの動向

グローバルのシャドーバンキングを理解するのに、FSBの発行するグローバル・シャドーバンキング・モニタリング・レポート

Global Shadow Banking Monitoring Report 2015 - Financial Stability Board

が詳しい。

そこからはGDP比でも年々その比率が上昇していることがうかがえる。いまや、シャドーバンキングを無視して金融システムを語ることができない。

また、グローバルで低金利の中、そうした金融政策が長く続けられる環境下でそのシャドーバンキングの役割が投資家にとって重要になってきているようにも見える。

まとめ

シャドーバンキングは、なんらかしらのパニックがあるときは震源地になりそう。なんとも雲をつかむような領域。また、金融当局からすれば、自分たちの手の届かない領域が増えることの不安感といったらないであろう。ただ、選択肢が限られた中でのシャドーバンキングの拡大ということもあり、落としどころが見出しにくいのも事実。

あわせて読みたい

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フロンターレ大島僚太選手と南野拓実選手のやり合っていた記憶。今は昔で日本代表

2016年9月29日にサッカー日本代表監督のハリルホジッチ監督により日本代表が発表されました。相変わらずいわゆる海外組とよばれる海外チーム所属の選手中心の選出となりました。その中でもJリーグで選出された数少ないメンバーに川崎フロンターレの大島僚太選手が。FWとMFのほとんどが海外組。大島選手はどんな選手なのでしょうか。

 川崎フロンターレの日本人の背番号10番

オリンピック代表やA代表に呼ばれて全国区になったイメージはありますが、そもそも2016年シーズンから川崎フロンターレで10番を付けてます。したがって、そもそも当然ながらプレーは際立っています。

どう際立っているかといえば、一言でいえば、ゲームを組み立てる、そしてFWに決定的な仕事をさせるパスを供給するという、極めてMFらしい仕事をします。

そこからシュートを打てる!と思っても、不思議とシュートを打たないことが多く、自分が打つよりも寄り確度が高い選手を見つけてはパスをします。結果的にはその選択でよかった(つまり得点につながる)というのでよいのですが、あの辺りは、ストライカーというよりはMFだなぁと毎回感じます。

川崎Fのゲームメイカーにボールを渡らせないようにする

川崎Fでは、最近はブラジル人大型MFのエドアルド・ネット選手とボランチのコンビを組むことが多く、「大島・ネットコンビ」でゲームを組み立てていきます。

DFが拾ったボール・奪ったボールは大島・ネットを起点としてゲームが組み立てられることから、相手チームはこの2人にボールが渡る前、つまり高い位置からのプレッシャーをかけることでゲームを支配させないようにする施策が良く見受けられます。

そうした相手チームの攻撃は、ベンチから見ると次のように見えるようです。以下は、ベンチで見ていた三好康次選手のコメント(2016年10月1日対ヴィッセル神戸戦)。

相手が前から来てこちらが後ろからつなげないような形を取ってきた。ただ、そのぶん2列目のところが開いていたので、そこをうまく使えばリズムを組み立てやすくなるかなと思っていた。*1

川崎Fのゲームメーカーにボールを支配させないために、前線からプレッシャーをかけ、また、ロングボールを入れるのが相手チームの定石。

問題は、そのロングボールのその跳ね返り、セカンドボールをどうコントロールできるかがポイント。以下は、大島選手のコメント(2016年10月1日対ヴィッセル神戸戦)。

後半は前が重かったのか後ろが重かったのかはわからないが、相手のロングボールに対して、後ろが下がるのは当然。ボールを奪って前を向いたときに、前の選手がプレスバックできないぐらい、間延びさせられていた。*2

川崎Fが押し込まれるような展開では、大島選手のボランチの会い方であるネット選手がDF陣のラインに入り込んでプレーすることがままみられます。結果、3バックが4バックにも見えたりもします。

こうした状況を見ると、相手のDF陣へのプレシャーが効いているのだなと思いますが、不思議なことに前半45分はそうした場面を見ることは多いですが、後半になると相手チームもバテるからでしょうか、あまり目にしなくなります。

川崎FのDFはDFだけではない

相手チームが高い位置からのプレッシャーを掛けに来る理由としては川崎Fのディフェンス力の安定性をついてく来ているというのもあります。

事実、DF陣のえ?!というような目を疑うようなミスで失点をすることもまま(多い?)あり、そこは相手チームが必ず狙うところではあります。

川崎Fは相手チームがそうした戦術に来ることは事前にわかっているので、対応策としては、高い位置でプレッシャーをかける人数をかけきれないようにさらに攻撃的にします。

右のエウシーニョ選手や車屋紳太郎選手をどこまで相手陣内にまで上げていけるか、そうすることで相手にとって高い位置でボールを取らせないようにするという姿勢で臨みます。とにかく攻撃的に行きます。

DF陣にミスが多い?攻守一体なのでそれは攻めきれていない証拠

風間八宏監督に言わせると攻守一体。「攻めていれば守る時間帯が減る」というでしょうか、ボールを支配して攻めていないのことの裏返しとしてDF陣へのアタックがされているということで、もっとボールを支配しろということになります。循環論のようですが、そう理解してます。

それでもDF陣の好きを狙われたらどうするのか、という質問もあるでしょう。もちろん風間サッカーのリスクは「カウンター」だという認識はあります。そこでのポイントは、カウンターには気を付けてプレーしているという解説になります。

ロシアW杯アジア最終予選にスタメンでの出場

大島選手が一躍全国区になったのは、ブラジル五輪サッカー日本代表の中心メンバーとして活躍したからでしょう。日本チームの結果はグループ予選敗退という残念な結果でしたが、アジア最終予選も含めて大島選手の活躍は記憶に残るモノでした。

ところが、私なんかからすると、別のポイントが目に行ってしまいます。大島選手と南野選手が同じ五輪の日本代表チームでプレーしているではないですか。南野選手は現在は欧州のザルツブルグでプレーしていますが、Jリーグのセレッソ大阪時代では大島選手とピッチ上で激しくやり合ってました。

ところが、五輪代表では、見る限りパス回しを含め、むしろ良い関係にも見えました。代表で高みの目標があるのは強いなと思いましたね。

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そうした五輪での実績もハリルホジッチ監督に買われ、満を持してのA代表でのスタメンが2016年9月1日の対UAE戦での出場です。

試合の結果は、痛恨の敗戦。1-2での敗戦となるのですが、その失点に相手へのPKなどを与えてしまい、敗戦原因とする批評も多かったのです。

とはいえ、大島選手の体調を含め海外組のパフォーマンスもさえず(つまり大島選手からすれば、使いずらい)、ハリルホジッチ監督自身もいっていたように「選択を間違えた」ということになります。

では、日本代表をどうすればいいかということになりますが、以下が2016年9月29日に発表された日本代表のメンバーです*3

2016年9月29日時点の日本代表メンバー

GK
川島 永嗣 カワシマ エイジ(FCメス/フランス)
東口 順昭 ヒガシグチ マサアキ(ガンバ大阪)
西川 周作 ニシカワ シュウサク(浦和レッズ)
DF
長友 佑都 ナガトモ ユウト(インテル・ミラノ/イタリア)
槙野 智章 マキノ トモアキ(浦和レッズ)
森重 真人 モリシゲ マサト(FC東京)
太田 宏介 オオタ コウスケ(フィテッセ/オランダ)
吉田 麻也 ヨシダ マヤ(サウサンプトン/イングランド)
丸山 祐市 マルヤマ ユウイチ(FC東京)
酒井 宏樹 サカイ ヒロキ(オリンピック・マルセイユ/フランス)
酒井 高徳 サカイ ゴウトク(ハンブルガーSV/ドイツ)
植田 直通 ウエダ ナオミチ(鹿島アントラーズ)
MF
長谷部 誠 ハセベ マコト(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)
柏木 陽介 カシワギ ヨウスケ(浦和レッズ)
永木 亮太 ナガキ リョウタ(鹿島アントラーズ)
香川 真司 カガワ シンジ(ボルシア・ドルトムント/ドイツ)
清武 弘嗣 キヨタケ ヒロシ(セビージャ/スペイン)
山口 蛍 ヤマグチ ホタル(セレッソ大阪)
大島 僚太 オオシマ リョウタ(川崎フロンターレ)
FW
岡崎 慎司 オカザキ シンジ(レスター・シティー/イングランド)
本田 圭佑 ホンダ ケイスケ(ACミラン/イタリア)
小林 悠 コバヤシ ユウ(川崎フロンターレ)
原口 元気 ハラグチ ゲンキ(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)
宇佐美 貴史 ウサミ タカシ(FCアウクスブルク/ドイツ)
武藤 嘉紀 ムトウ ヨシノリ(1.FSVマインツ05/ドイツ)
浅野 拓磨 アサノ タクマ(VfBシュツットガルト/ドイツ)

 と、ほとんどが欧州組。ただし、全員が試合に出れているわけでもなく、ハリルホジッチ監督自身も以下のように言ってます。

我々はアジアではかなり良い攻撃をしている。これまで7、8年間日本に貢献してきてくれた選手を外すと、メンタル面でチームが壊れる危険性もある。これは、試合に出ていなくても選手を信頼しているという私のメッセージ。彼らのピッチでの返答を待ちたい*4

もう、これは戦略ではなく、精神論。公の場でいうコメントではないですね。相当ヤバいところまで追い込まれていると思います。

日本サッカー協会ももし仮にどこかの試合でハリルホジッチ監督がしくじるようなことがあった時に、監督代行もしくは監督として代わりを見つけてこないといけないと思いますが、そのピンチヒッターを手倉森コーチに充てるというプランBを準備しつつあるのかというのを人事をみて思います。

大島僚太選手の移籍

さて、今後の大島選手の活躍は気になります。今年川崎Fがチャンピオンズシップで優勝したり、ロシアW杯最終予選で活躍することになれば、当然海外からのオファーの話も出てくるでしょう。

ただ、川崎Fも選手層が厚くなったとはいえ、中村憲剛選手の次の世代としてコアとして位置づけられているので、すぐに変わりがいるというわけでもありません。川崎Fとしてはなかなか難しいところです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本代表のボランチも正直ちょっとマンネリ化しつつあるので、大島選手のようなテクい選手に世代交代してほしいですし、「個」を攻略することでサッカーのプレーの質を追求してきた風間八宏監督による日本代表チームを見てみたいなと思います。その時には、大久保嘉人選手や中村賢剛選手、そして大島僚太選手も当然日本代表チームに入ってくるでしょうから、ポンポンとボールをけり込むサッカーから脱皮できる日が近づけばと思います。

FinTech対応遅れれば珪素谷・シリコンバレーに敗れ日本勢は資産との接点失う

FinTechはバズワードだと切り捨てる人もいるかもしれません。ただし、そんなバズワードで済ませてよい状況ではないでしょう。

一言でいえば中央集権的な(これはこれでこのフレームワークの中でセキュアであったので良かった)ユーザ接点から分散的なユーザ接点にシフトする切り口をテクノロジーがきっかけとなっているといえます。テクノロジーが規制業種に仕掛ける非常に大きな流れです。

珪素谷の狙い所の金融

珪素谷(シリコンバレー)は民生・非規制業種で相当程度やりつくした感があるので、目下の目線はエネルギー、ヘルスケア、金融、自動車といった規制業種です。規制業種はプレーヤーの数が基本的には限られているので、新規参入組からすればプレーヤーの顔が見えてよいというのがります。

加えて、テクノロジーの純粋な競争にさらされていないので、情報格差があり、戦いやすいというのもあると思います。

FinTechの肝はシームレスな体験を実現するテクノロジー

FinTechは突き詰めると技術基盤はビットコイン・ブロックチェーンということになりますが、これを活用することでシームレスな金融取引というようなことに始まりどんなことができるようになるかという創造力が勝負。

たとえば、すでにauとMUFGがじぶん銀行をはじめてます。現在は預金の管理だけではなく、(今はまだ定期預金といった基礎的な金融商品だけですが)他の金融商品も購入できるようになると、本当にシームレスな金融体験が可能になるわけです。

中国人の友人にAlipay(アリペイ)を見せてもらったときは衝撃を受けました。もっとも進んだFinTechアプリはアリペイかと思います。

それこそ銀行と証券の垣根もないですし、預金と金融商品という資産を一括で管理出きるわけです。そもそも証券と銀行が別々なのは規制視点だからであってユーザ目線であればその必要性-金融リテラシ次第ではあるけれども-は必ずしもないというのが実際ではないでしょうか。

法と金融とテクノロジー

スマートコントラクトも普及すると金融は切り離せないエッセンスなので法と金融とテクノロジーがより絡みあう世界になっていくわけです。

金融も法律の世界も極めてレイバーインテンシブな業界であったことは否めないので、そこにテクノロジーが入り込んで来れば当然ながら機械的な作業はなくなっていくわけです。

ただ、要素要素を組み合わせてストーリーとしてくみ上げて(ここも機械でできるという話にもなってきてますが)、受け手に対して面白い仕組み、システムやコンテンツを作れるかになってくんでしょう。

 

シンギュラリティとは-実はシンギュラリティ大学もある

シンギュラリティとは知っている人は知っていますが、最近知ったという方も多いのではないでしょうか。今回はその定義と注目されるようになった背景を簡単に見ておきましょう。

シンギュラリティとは

シンギュラリティとは「技術的特異点」ともいわれ、機械(人工知能)が人間の知能を上回るポイントです。2045年などをベンチマークとしています。それは半導体の集積度が増し脳細胞のレベルと比較すると遜色ないレベルを意識しています。

なぜ注目されるようになってきたかというと、第3次AI(人工知能)ブームが始まったからです。ちなみにAIには過去2回大きなブームがありました。今回は3度目です。

一方、シンギュラリティはすでにみんなが将来そうなるかと信じているかというとそうではありません。シンギュラリティの実現性に関して肯定派・批判派ともにいる状況です。

シリコンバレーの特徴としてはコンセプトを思いっきり外に公開してその後事実を作りに行くことが常套手段なので、現状に驚きはしませんが、意識をしておくべきテーマです。

レイ・カーツワイルとX Prize財団

シンギュラリティはレイ・カーツワイルが提唱した概念ですが、そのカーツワイルとX Prize財団で大学も設立しています。その大学がシンギュラリティ大学です。

また、カーツワイルは2012年にグーグルに参画しており、グーグルがAIで主導権を握ろうといろいろ展開をしています。細かくは拙著でも触れています。ちなみに自然言語処理で先行しているのはIBMです。

>>Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない (角川EPUB選書)

カーツワイルのシンギュラリティについてさらに詳しくという方は、NHKとのインタビューに答えた本がありますので、そちらが参考になります。

>>レイ・カーツワイル―加速するテクノロジー (NHK未来への提言)

最近NHK出版も上の内容をアップデートしてます。

>>シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき

シンギュラリティ大学のプログラムとは

Wiredでシンギュラリティ大学のプログラムが紹介されていました。期間は6日間で午前7時から午後10時まで開かれるそうです。

「新しい都市」ねらいで購入したのですが、いずれの記事も特集も一読の価値はあると思います。

>>WIRED(ワイアード)VOL.24[雑誌]

アジェンダを見る限りは、授業のテーマは正直ふーんという感じのラインナップです。外向けの授業だからでしょうか。一言でいえば、「今風」です。

  • 等比級数(指数関数と呼ぶと思うのですが、雑誌では等比級数に。exponential)
  • コンピューティング
  • 人工知能
  • 自動運転
  • ビットコイン
  • デザインシンキング
  • AR/VR
  • ヨガ・瞑想
  • 太陽光発電
  • 宇宙
  • フォーキャスティング
  • ビッグデータ

などなど。

確かにいずれも熱量の高いトピックなのですが、逆を言うと「おっ!」というトピックもないので、想像の範囲内というか、とびぬけてくれてはいないというのが印象です。受講したら感動するのかもしれませんが。

まとめ

人工知能と重なり合ってくるテーマで、また少し宗教色もでてきて整理がしにくいのですが、今後もよりコンセプチュアルになってくるテーマかと思います。

都市経済学は大学や大学院では人気がない?!東京五輪に向け必要な研究なはず

都市経済学はミクロ経済学のひとつの領域であるのだけれども、日本の大学や大学院では講座を開いているところが少ないという。また、都市経済学の研究者も少ないという。

一方、日本の人口動態や首都圏と地方との関係、2020年東京オリンピックに向けて東京をはじめとした首都圏のインフラをどのように準備していくかを考えれば都市経済学は必要な研究、学問ともいえるのだと思いますが、どうなのでしょうか。

Airbnbに代表されるようにシェアリングエコノミーといった既存インフラの活用事例などに注目がされてくれば、今後は必然興味の対象となると思います。【2016年8月27日更新】

都市経済学とは

都市経済学とは何かといえば、都市をテーマとした経済学。ただし、その中心は価格理論をスタートとしたミクロ経済学の応用領域です。

経済学全般にそうかもしれませんが、限られたリソースを活用してどのように分配し、その結果があるかを研究するものです。不動産は、その場から動かせないので輸入できるものなどと異なって「限られた」という概念は分かりやすいですね。

入門書の目次を見渡せば、借家か持家か、家賃や住宅価格の決まり方、都市と地方の人口配分、土地利用規制、所得分配、都市交通、都市政策などの問題を取り上げていています。

都市経済学を理解しようといくつか入門書をあさってみました。

いわゆる都市経済学として俯瞰できるのは、ちょっと発刊年が古くなりますが、宮尾尊弘「現代都市経済学」が良いかなと思います。

他では、山崎・浅田「都市経済学 (シリーズ・新エコノミクス)」が面白いです。この本を読み始めてこれほど切実に都市経済学の必要性と魅力うぃ訴えかけてくる「はじめに」も少ないです。はじめにを少し引用して紹介しておきます。

 

 

大学生や一般的な社会人にとって、金融論や国際経済などはそれほどなじみの深いものではないでしょう。(中略)

他方、都市や住宅問題は身近な問題で、しかもミクロ経済学の応用問題としてはとても適しています。(中略)

ミクロ経済学の応用として学ぶ市場の失敗の例も、都市や住宅に関する身の回りの事例で多々見られます。例えば、外部性では、一般的なミクロ経済学の教科書で出てくるような、工場排水によって汚染された川下で漁業を営む漁師の例より、隣のマンションの騒音や交通混雑の方が身近な問題でしょう。(中略)

国鉄が民営化されてJRになりましたが、それによってどんなことが起こったかを考えれば、規制緩和の効果も実感できます。スイカや駅ナカ…(中略)…規制緩和や技術革新の重要性も理解できるはずです。最近問題になっている格差問題も、地域への経済政策と関係させて考えると、どのような政策が日本にとって必要かが分かります。

 

という具合に、都市経済学の必要性が縷々述べられています。確かに、言われてみれば身近なことばかりだと思いますが、金融論が身近でないかといわれればそこまで程遠くないでしょ(笑)と思いますが、どうしても都市経済学をメジャーにしたいようです。

大都市圏の人口増ペースも大したことがない

大都市圏には地方が疲弊しても人口は増加している(集まっている)のかと思いきや、上の本では2005年までのデータしかないですがその水準は年率0-5%の間に納まってしまうほど。

アウトプットはインプットに依存するところが大きいので、よほどの生産性向上要因がなければGDPも2-3%成長すれば御の字という気もします。

川崎市などは相当の人口増があった気がしたのですが、確かに年率に直せば2-3%といったところでしょうか。

民間住宅投資は伸び悩み

2000年以降急激に家計貯蓄が減少しています。これでは住宅投資も拡大する理由にはなりませんね。

一方で、持ち家の帰属家賃は積み上がり続け、気づけばGDP比9%。単純に高齢化で持家に住む人が積みあがっているのでしょうか。寿命が延びる×持家数が増える=帰属家賃拡大、というロジックは成り立ちますからね。

借地借家法

この法律も常に話題に取り上げられますが、都心の家族向け貸家の供給不足の一因となっているようです。

単身向けマンション・アパートは供給は多いのですが、家族がいるベースで家を借りようとすると案件がなく選択しにくいことが多いです。

結局、自分の気に入った家、間取り、広さを考えると家を購入するという人も多いのでしょう。金利も低いことだし、結局家を買ってしまうという…。

いや待てよ、家族向け貸家の供給不足を借地借家法のせいにしているけれども、国が住宅投資をある水準以上に維持しようとするのであればこの悪法と呼ばれる法律を生かす方が良いという目論見もあるのではと勘繰りたくもなります。無駄が需要を一時的には生み出しますからね。

じっくり派には高橋孝明「都市経済学」がおすすめ

上で紹介した2冊よりもさらに詳細に知りたい人には、次の本がおすすめ。薄いから入門書かなと思いきや、中級者も対象かと思います。

>>都市経済学 (有斐閣ブックス)

まとめ

ということで、 都市経済学は今後の日本が直面する問題とそれを解決する策を考える際には重要な領域と考えますが、リオ五輪がちょうど終わった今、東京オリンピックまであと4年しかないんですよね。間に合うのか日本。安倍マリオは次はどのような策を打ってくるのかには一応期待はしてます。

2016年Jリーグの天王山無事終了。浦和レッズvs.川崎フロンターレ@埼玉スタジアム2002

2016年明治安田生命J1リーグの2ndステージの天王山・対浦和レッズ戦@埼玉スタジアム2002。川崎フロンターレは前節鳥栖戦にアウェーで敗れ、レッズは2ndステージここまで無敗。今節がフロンターレにとっては勝ち点でタイに並べるチャンスかつ首位攻防戦。

試合開始前は台風による悪天候でどうなることかと思いましたが、奇跡的にも試合中は雨は降らず。結果はフロンターレが2-1で勝利。埼玉まで行った甲斐がありました。

余談ですが、埼玉スタジアム2002という名称のごとく日本でW杯がひらかれたときの競技場だと思うのですが、周辺の開発は一体どうなってしまったのか?という状況。浦和美園駅は南北線終点というのは知っていましたが、あんなに立派なスタジアムがあるのにもったいないなと。

あと、こういう大事な試合はレフリーも相当注意して試合を見ないと昨日はひいき目に見ないでも相当程度レフリングで試合の質を下げてました。

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じれずゴール前で得点可能性を高める

今日の試合を見ているとゴール前のシュートチャンスで「打ってもよいのでは?」という場面でも細かくパスを回すシーンが多かったように思えます。まわりのFサポも「打て!」と声を出している人も多かったです。

ただ、選手が意識的に遠くから無理をしてシュートを打って終わらせることなく、ゴール前でしっかりチャンスを高めようとしているのは気になりました。大島僚太選手のゴールを前にしてあえて外の近い選手にパスを出すというのは一見消極的にもみえたのですが、結果、2得点ということなので練習をしてきた成果が出たということなのでしょう。

そもそも対レッズ戦では試合中にそれほど多くないチャンスを決めた方が試合に勝つという理解なのでしょうか。確かに、「武藤のあのシュートが決まっていたらどうなっていたかわからない」という展開ではあったかと思います。これまで以上にゴール前でのボール回しが多かったように思います。

前線に人が足りない

大久保嘉人選手がここ最近よく口にする言葉です。今回も試合前にこんなことを口にしています。

前回の浦和戦は完敗だった。優勝するためにはアウェイで勝たなければいけない。前節の鳥栖戦もそうだったが、前に人数が足りていなかった。そこをどうするか。点を取られると勝てない。ただ、少しメンバーが変わるので、また違った感じになるかもしれない*1

今回の試合も前回同様にお互いのディフェンスラインがぐっと上がった状態での試合展開でした。その中でこれまで以上に前線への人の出入りがあった試合だったのではと思います。

エドアルド・ネット選手、大島僚太選手、エウシーニョ選手が攻守の起点となっていたのではないでしょうか。結果、前線にFW陣に加えた彼らで厚みのある攻撃ができたということだと思います。

前回対戦の反省

2016年4月24日に明治安田生命Jリーグ・1stステージでホーム・等々力競技場で迎えた浦和戦はあまり良いところがなく試合が終わった印象が今でも残っています。1stステージの浦和戦風間八宏監督は次のように言っています。

今日はカウンターとなったときの判断、それからゴール前の質。これがちょっと悪すぎたかなと思います。これをまた修正して次の試合に臨みたいと思います。*2

今回の試合だけではないですが、今回のゴール前のパスは質を重視した結果ともいえるのではないでしょうか。

風間監督のこれまたいつものコメントのように相手の嫌なところへのパスはこれまで以上に増えたように見えます。大久保選手は、あえて相手が密集しているところの見方にパスをしてくさびを入れていました。周りのサポもどよめいていましたが…。

今回の試合後の風間監督のコメントでは、「遊び球」という言葉になっています。

それから、自分たちがだいぶ遊び球を使いながら相手を見られるようになってきたのかなというふうには思います。*3

まわりで見ていると遊び球もドキドキしてしまうんですが、余裕あるらしいです…。

浦和レッズキラー・森谷賢太郎

レッズキラーとしての森谷選手が途中交代で投入されたのですが、またしても試合を決める2点目をレッズゴールにたたき込みました。正直、レッズキラーといってもねぇ、と思っていましたが、相性というのはあるのですね。

8月19日に入籍したとのニュース*4

が流れていましたが、その流れの中でこの結果。

できすぎですね笑

それにしても今回森谷選手を投入するあたり、風間監督のエンターテイナーとしての資質を感じさせずにはいられませんでした。

まとめ

まずは次にステップを踏み出すことができる結果。これからも競合相手の試合が続くのでしっかり勝ち切る面白い試合を期待。けがをした選手も戻ってきているので、層を厚くしつつ総力戦で勝ち進んで欲しい。今年フロンターレがチャンピオンシップで優勝すれば風間監督がハリル後の日本代表監督への道が開けると思っています。オリンピック代表監督等の仕事は引き受けるべきでもないと思います。

川崎フロンターレ・風間八宏監督と湘南ベルマーレ・チョウ・キジェ監督のコメントが面白い

2016年7月30日のJリーグ2ndステージの湘南ベルマーレ vs 川崎フロンターレを観ての感想と両監督のコメントが文学的にも面白い件。

点数的にはもっと差を広げることができた展開

ボール展開を見ていると0-3となった時点でも、フロンターレからすれば決して安心してみられるというでもなく、点数さほどの安定感はなかったように感じます。

ただ、チャンスをしっかりと3回ものにしたという点でフロンターレが逃げ切ったという印象で、正直首位を走っているチームと降格の可能性もあるチームの試合という感じはしませんでした。というより、後半のしばらくの時間は一方的に撃ち込まれている時間帯が続きました。

結果的に2-3で終了ですが、試合後はどっと疲れが残りました。

大久保嘉人選手が試合後にサポーターにあいさつをした後、なんいやら非常に不満げに下がっていったのが印象的でした。正直まだ試合巧者といえるような王者の風格はない、と大久保選手も反省しきりという印象を持ちました。

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監督のコメントから試合を振り返る

さて、いつものように試合後の監督のコメントから戦術の計画と実際を振り返ってみたいと思います。

最終的には厳しい試合になってしまったのですが、やはり、クオリティーのところを考えれば、6-0にもなったゲームだと思いますし、3-3に追い付かれてもおかしくなかったゲームだったと思います。*1

このコメントの通り、3点をリードした時点で試合展開が粗いなと感じたのは私だけではなかったようです。

日頃、全ての選手には練習で想定する試合の基準を高くしてくれと言っていますけど、そこにまだ、多少、途中から出てきた選手も含めてばらつきがあるなと。非常にもったいない失点ですし、チャンスがあるのですけど、チャンスにできない。そこのところの質がもったいなかったなと。*2

このように選手のプレーの質についてのダメ出しです。

もっとしたたかにならないといけないな、という3-0なので。そこは本当に、選手は勉強になったと。あるいは、勉強にしてほしいなと思います。 *3

試合としては勝ってはいるのですが、勝ち切れていない、ずるがしこく試合展開ができないという反省です。

一方、湘南ベルマーレのチョウ監督のコメントがさわやかすぎるので紹介しておきます。

前を向く、ポジティブにやるなんていうのは、人に言われてやることじゃなくて、自分自身がオギャーって泣いて生まれた時から、おそらくそういうふうに、いろいろな人から教わって、いろいろな人に支えられて今まで来たつもりだし、湘南ベルマーレというチームを少しでも、どんなことがあっても前に進めようというふうに自分ではしてきたつもりです。*4

本当にそう思います。モチベーションがないという人は、おそらくはじめからその熱量がちいさいのだと思います。

J1の監督になれるのは18名、J2、J3を合わせても100はいない中で、こういう恵まれたというか、毎日刺激的な仕事をさせてもらっているのは、Jリーグやこの湘南、サポーターの皆さんに感謝しなきゃいけないですけど、自分が成長して選手の良さを引き出すために、あと何をすればいいのかなというふうに正直思っているし、でもそんなことじゃダメだというのも分かっているんだけど、でも、あえて正直な気持ちを言うと、皆さんにどう取られるか分からないけど、そんな気持ちでいます。*5

自分の立場が極めてレアであることを再確認するというコメントなのですが、これも本当にそう思います。職業が何であれ、周りを見渡してみたと時に、誰でもできることではない仕事ができるポジションにいるのにその意味を理解しきれていない人がいます。自分の近くにそうした人を見ると本当にもったいないなと思いますが、当の本人は気づいていない可能性が高い。

湘南ベルマーレも現在の順位は来年を考えれば危機意識を持たざるを得ないですが、それでもJ1で戦って結果を残しているという点ではチョウ監督の言う通りです。

まとめ

試合が終わってシャトルバス待ちでおおよそ30分待って、平塚駅まで更に20分程度かかり、その後さらに電車に揺られぐったりして帰ってきましたが、両監督のコメントを見て、なんだか次も頑張ろうという気になってきました。サッカーとは不思議なスポーツです。

ソフトバンクが英国アーム(ARM)を買収するとの報道

この報道の通りだとすると、ソフトバンクはIoTとしての自動車向け半導体とデータセンターのCPUでも覇権を握れる可能性が出てくる。さすが孫さん。

これは極めて壮大な話。

ほぼ1年前の記事ですが、インテルとアームの比較を自動車向け半導体を絡めながら分析して記事です。

bizgate.nikkei.co.jp

おかげさまで個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)は3周年

Longineも先月の6月26日をもちましておかげさまで3周年を迎えることができました。ありがとうございます。

その直前の24日にはまさかの英国のEU離脱ショックもあり、資本市場も大混乱となりました。まだまだこの先はありそうな気配ですが、そのパニックはいったん吸収した感じです。

今回は、ナビゲータープラットフォームが運営する3つの経済メディア-Longine(ロンジン)、投信1(トウシンワン)、株1(カブワン)について振り返ってみます。

Longineは3周年

Longineは3周年を迎えることができましたので、月購読契約をいただければ過去記事読み放題とさせていただきました。それ以前は購読開始日から過去1か月まで読めるようにしていたので、過去記事を研究されたい読者の方には使いやすくなったかと思います。日本株も優良銘柄でも割安な銘柄も出てきていますので、この際に是非どうぞ。以下、リンクです。

www.longine.jp

投信1はYahoo!様、楽天証券様にコンテンツ配信

投信1は2016年秋にオープンした資産運用初心者向け経済ニュース解説メディアですが、Yahoo!ニュース様、Yahoo!ファイナンス様、楽天証券様にも配信させていただくことができ、多くの読者の方と接点を持つことができるようになりました。

今後も執筆陣を拡大しながら、役に立ち面白い経済ニュース解説を心掛けていきたいと思います。

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また、現在6,000本近いといわれる投資信託ですが、その選び方についての記事などもあります。

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Longineの決算速報を楽天証券で無料で読む方法!

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株1はじっくり後で読むに堪える読み込み型メディア

株1はこれから資産運用を始めようとされる方に対して証券会社選びや株のはじめ方などを解説しています。じっくり読んでいただければお役に立てるようなメディアを目指しています。

www.kabu-1.jp

ネット証券選びは以下の記事が便利かと思います。

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まとめ

引き続き日本の個人投資家のために情報格差をなくすためにがんばっていきたいとおもいます。よろしくお願いいたします。

フロンターレのスタイルにはまった大塚翔平の動き。髪型と髭は二の次

最近川崎フロンターレの大塚翔平選手の周りが騒がしい。それはなぜかをひも解いていきたいと思います。キーワードは、ユニークな髪型と風貌よりもやはり大塚翔平の足下のボールさばきのうまさとレジリエンス(復活)に多くの人が共感をしているからではないでしょうか。【2016年8月27日更新】

大塚翔平の注目ポイントはやはりプレーと技術の精度

「出して、動く」は風間八宏・川崎フロンターレ監督のコンセプトだが、その言葉通り、大久保嘉人選手、中村憲剛選手、小林悠選手、大島僚太選手の間でうまくボールを引き出しパスを供給し、時にはシュートも打てるのが大塚翔平選手の魅力だ。

精力的に動き回るというのは若い選手は誰もが意識するだろうが、味方にかぶらないでボールを引き出し味方にパスを出すというのは実際は難しい。

「プロのサッカー選手であればそんなのことができるのは当然であろう」という声もあるが、風間監督はフリーの味方の選手に単純にパスを出せというのではない。

相手ディフェンスがついていても味方の足下にボールを出すことも選択肢として持っている。風間監督のフリーの意味もそもそも異なる。フロンターレの選手はプレッシャーがあるのは当然で、その中でボールを受ける技術が必要とされる。

風間サッカーでは、「タテへの攻め」を基盤としているようには見える。とはいっても単純にタテに放り込むサッカーではない。これはハリルジャパンのサッカーとは全く異なる。

スペースやゾーンを攻略するのではなく、選手としての「個人」を攻略するサッカーをしている。したがって、味方の足下に強い速めのボールを蹴り入れることも多い。チャンスがあれば仕掛けるし、選択肢が限られるのであれば再び味方にボールを戻す。ただし、ヨコへのパスよりは相手が準備しにくいタテへのパスを終始狙っている。繰り返すが、それはスペースを狙ったスルーパスというのではなく、フリーの選手へのパスだ。

結果、川崎のポゼッションは高くなるが、別段その数字を狙っている訳ではない。あくまでも最適な解を求める際に、頭を動かしてチャンスをうかがった結果のポゼッションである。ポゼッションを高くするというのでは目的と手段が逆になる。

この攻め方には選手の技術力とタテに攻めるときに次のアクションアイテムを瞬時に判断しなければならないインテリジェンスが求められる。いわゆる思考のサッカーだ。

大塚翔平はこの戦略のトップ下のパーツにうまくはまったといえる。

風間八宏監督の思考法をさらに理解したい方は以下がおすすめ。

【書籍】

>>>「 1対21 」 のサッカー原論 「 個人力 」 を引き出す発想と技術

>>>風間塾 サッカーを進化させる「非常識」論

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>>>風間八宏 FOOTBALL CLINIC Vol.2 [DVD](ちなみに内容は運ぶ・外す)

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大塚翔平のサッカーキャリア

実はガンバユースで宇佐美貴史選手と同期だ。まあ第一印象は意外。プレースタイルは全く違う。

余談だが、宇佐美はハリルホジッチ日本代表監督にも“気に入られ”代表に呼ばれ続けているが、正直いうとハリルの求めている戦術の中では宇佐美はボールを持ちすぎているように見える。だからうまく行かない。

いや、宇佐美はドリブラーとして、タテサッカーへのアクセントとして呼ばれているのだ、という指摘に対しては、ボールをキープできなかったり点を入れられなかったら意味はないよ、というのは言いたい。

アジアでは宇佐美のボールの持ち方でなんとかやり過ごせるかもしれないが、ワールドカップのレベルではもっとボール離れを早くしなければ難しい。ドイツに再挑戦するということになったが、その辺りは宇佐美のことなので修正はしてくると期待する一方、柔軟性を欠けばドイツの2度目の失敗となるだろう。

ハリルの目指すサッカーは、ひと言でいえば「タテに速いサッカー」。これは別段ハリルだけではなく、グローバルでも“人気のある”スタイルだ。

その際にポイントとなるのは、基本は「個」の能力だ。パスをボール1個分以下のずれの精度でできること(そのためには敵のマークの動きを微小時間に微小空間でずらすことも必要)と受けた後にボールをとられない技術が必要。

日本代表に選ばれる選手はもちろんそれらの水準は高いところにあると思うが、タテへの攻めのコンセプトがそもそもどのようなメリットがあるのかを理解していないと実現性は低い。話はそれたが、大塚翔平は上記の2要素を現時点で満たしている。そこが風間フロンターレにはまっている。

大塚翔平はガンバのトップチームに宇佐美とともに昇格した後、レンタルなども含めてジェフユナイテッド千葉、ギャラヴァンツ北九州を経て川崎フロンターレに入団している。

2015年にギャラヴァンツは契約終了し、トライアウトを経てのフロンターレ入りである。つまり一時はJ2でも通用しないと判断された選手が現在Jリーグで首位のチームでスタメンで出ていることになる。フロンターレのスカウトの目利き力が優れていることとJ2のクラブチームが選手を評価する基準の行けてなさに感じるところがある。

大塚翔平のレジリエンス力

トライアウトを経てJ1に返り咲いた訳だが、一度はサッカーができなくなる状態にまで追い込まれたこともあり、向上心が半端ない。試合後は得点しても反省の弁が尽きない。

2016年1stステージ最終節の大宮戦での試合後のコメント

ただ、後半の最初にバテて足が止まってしまい、ボールに絡めなくなってしまった。そこは自分の課題。*1

2016年2ndステージ開幕戦の仙台戦での試合後のコメント

単純なミスが多すぎて。自分の中でも納得というか、当然の交代だなとは思った。(中略)簡単にはたいてもう一回動き直して貰えばよいのを、ボールウォッチャーになってしまって。(中略)難しい所だが、いつもは味方を見つけるのが早くて、そこに出してまたもらって、というのを連続してできるが、今日は探して、探して、となってしまった。自分の悪いところでもあるが、そういう部分が出てしまった。*2

というような具合である。

素人からみれば、Jリーグで既にプロとして活躍しているサッカー選手でもどんどん成長するのかと妙に感心してしまった。

なによりも、川崎のサポーターだけではなく、それ以外のチームのサポも大塚にどうしても興味が行ってしまうのは、やはりどん底から這い上がってきて、輝きを取り戻した復活力(レジリエンス力)ではないだろうか。

日常で嫌なことがあっても大塚ががんばっているのを見ると、結構爽快になる。

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大塚翔平の髪型

ここからはおまけのポイント。

ひげを伸ばしたのは最高に良いと思う。思い切って髪型は坊主頭で良いのではないだろうか。そうすれば、勝利後のウォーターファイトで逃げ回らずにすむ!のではないだろうか。

ただ、外から見ているとチームにとけ込んでいるなぁと見えるだけで、それ以上以下でもない。

正直、ほっといてあげればとも思うが、突っ込みどころが多いキャラなのだろうか?!周りがほっとかないという状況。

まあ、いろいろな今期中に是非いろいろなバージョンを試してほしい。

大塚翔平のチャント

❝オッオーオーオオーオオーオーオオオツカ ショウヘイ❞

極めてシンプルである。

話をするのは苦手なのか、メガホンを渡されても、いつもこのイントロを歌うことで終始している。サポーターへの対応もまた極めてシンプルである。

これまた意外にも登里享平選手と小学生から知り合いだった

Jリーグでプレイするようなレベルの選手は昔から知り合いなんだなと妙に感心してしまったが、トライアウト後にフロンターレの練習に参加することになった後に大塚選手から登里選手に久しぶりに電話を入れているあたりは、人間関係の良さというか不思議さを感じる。

同時に登里選手も大塚選手のプレイスタイルがフロンターレに合うということをコメントしている。

このあたりの詳しいやり取りは、F-SPOTのピックアププレーヤーを参照のこと。

www.frontale.co.jp

まとめ

活躍すればするほど川崎サポは大塚翔平を応援するであろうから、今後も得点も期待されるであろう。

ただし、欲を言えばボールを受けるのはうまいので、次は1.5列目でくさびの役割だけではなく、大久保選手や小林選手に 圧倒的な精度でのパスを供給してほしい。

それを見るために等々力競技場に足を運ぶ。

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JT(日本たばこ)のM&A成功にむけた戦略と歴史的背景

日本の企業はM&Aが苦手というが一方で上手な企業もある。その秘密はぜひ知っておきたい。上手な企業の代表例としてJTがある。ただし、その背景は為替と内需逓減予想というマクロ環境変化と貿易自由化という規制緩和という外部環境の変化が後押ししている。外部環境の変化により内部が変わったというケースだ。

日本にもM&Aが上手な企業がある

日本企業がM&Aが下手といわれながら成功している企業がある。それはJT(日本たばこ産業株式会社)である。

個人的にはたばこは吸わないし煙やにおいをかぐのも嫌いであるが、JTを会社として評価するならば上手に経営されているといえる。

何が上手に経営されているかといえば、M&Aを通じて国内の内需逓減リスクをヘッジしながら海外でのたばこ需要をしっかり取り込んでいるということだ。

そんなことは当たり前だという人も多いが、その当たり前ができる会社はそう多くない。

なぜJTはM&Aに走ったのか

では、なぜJTはM&Aを成長エンジンとするようになったのであろうか。そもそも日本たばこというくらいであるから、内需関連企業で海外にそれほど目利きができなさそうではある。

その背景に関してはJT代表取締役副社長である新貝康司著に詳しい。

>>>新貝康司JTのM&A 日本企業が世界企業に飛躍する教科書 」日経BP社

以下の3点が大きい。

  • 1985年のプラザ合意後の急激な円高
  • 1987年のシガレットへの関税率ゼロ(日米間)
  • 1988年の国内需要予想(20-60歳までの人口と一人当たり名目GDP)

というように民間企業!ではいかんともしがたい環境を目の当たりにし変わらなければと思いなおしたのが大きい。

JTに限らず、M&Aが会社の成長戦略に組み込まれている企業は国内での先行きがなくなった企業に多い。

M&Aのポイント

さて、JTのM&Aでのポイントはどのようなものであろうか。同書で繰り返し出てくるフレーズは「バリューチェーン」という言葉だ。

輸出・現地販売の事業モデルから、各国マーケットでバリューチェーン全てを有する事業形態へ脱皮することが必須でした。 

*1

 というように、各地ですべてを持つことに意識を置いたM&Aを行ってきたわけである。業種は異なるがダイキンもJTに近いM&Aをしているように見える。

JTのM&Aの歴史

JTの過去のM&Aの実績からピックアップしたのが下のリストだ。

  • 1992年:マンチェスター・タバコ買収
  • 1989年:RJRナビスコから米国以外のたばこ事業買収
  • 2007年:Gallaher買収
  • 2013年:水たばこメーカーNakhla(エジプト)買収
  • 2014年:電子たばこZandera(英国)買収
  • 2015年:レイノルズ・アメリカンから米国以外の「ナチュラル・アメリカン・スピリット」買収

毎度毎度買収価格が高いのでは?!ということで株式市場でネタにされる同社。

ギャラハー買収後にリーマンショックが起き、経営者は肝を冷やしたと思う。資本市場ではクレジットクランチなどもあったと思うが、うまく乗り越えてきたなと思う。

同時に新しい技術を持つ企業にも投資をしており、あらためて目鼻が効く会社だなと思う。冗談のような話だが、たばこ会社であるのに鼻がきく。

経営者からすれば、買収価格はいつも後付けの “Given”であるであろうから、周りからとやかく言われない程度の結果を出しつつ、時間をかけながら買収前以上の効果を出していくほかないのではと思うが、どうであろうか。それにしても Well-managedということである。

まとめ

たばこを吸わないのでよくわからないが、まわりに煙たがられないタバコができれば、それはそれは十分なイノべーションかと思う。電子たばこが喫煙者に受け入れられ、普及すればその要素を十分に満たすのではないであろうか。

たばこはいまやどこに行っても規制の嵐で、新規参入したいと思う人は少ないであろう。そういう産業は基本はM&Aが主力の戦略として機能するし、そうしなければ買われる方に回るしかない。

機関投資家もたばこや軍需産業には投資をしないという人も多いので、こうした切り口を乗り越えて投資家に投資の魅力をダイレクトに伝える方法が何かを考えるのも苦労は多いであろう。配当が増えていればよいといえばそれまでだが。

*1:出所:JTのM&A p.77