読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

泉田良輔の考えたこと

ノマドアナリストが株式投資, テクノロジー, エネルギー, FinTech, メディア, サッカーをテーマに.

戦術的ピリオダイゼーション理論入門。練習とトレーニング方法とは

戦略

サッカー関係者では知らない人はいなくなってきた印象もある「戦術的ピリオダイゼーション理論」。今回は、「FCバルセロナスクールの現役コーチが教えるバルサ流トレーニングメソッド」やサッカーダイジェストの記事でバルサの練習法に関して非常に有益な箇所を見つけたので、まとめておきます。

戦術的ピリオダイゼーション理論のコンセプト

戦術的ピリオダイゼーション理論(Tactical Periodization)はポルト大学スポーツ学部のビトール・フラデ(ビクトル・フラーデ, Vitor Frade)教授が約30年前に開発した理論です。

フラデ教授はサッカーを以下のように定義しました。

サッカーはカオスであり、かつフラクタルである

何じゃそれは?!というツッコミもあるともいます。金融では「カオス」は、意味不明なことが起きた時に冗談交じりに使います。フラクタルは、あまり使うことはないですが現象を表現する際に時折耳にする程度です。

カオスとは

カオスをロングマンの現代英英辞典で引いてみると、以下のようになっています。

a situation in which everything is happening in a confused way and nothing is organized or arranged in order

フラクタルとは

フラクタルはwikipediaでは、以下のように定義してます。

図形の部分と全体が自己相似になっているものなどをいう。*1

フラクタルとサッカーの関係は村松尚登氏がうまく解説してくれています。

全体のデザインである試合(=サッカー)と、中間のデザインであるグループの攻防と、細部のデザインである各選手の攻防はフラクタルの関係にあり、サッカーに含まれるすべての要素が全階層のあらゆる瞬間に含まれているのです。*2

また、サッカーダイジェストの記事では、フラクタルを軸に、システムやポジショニング、練習と実践の関係を以下のように説明しています。

監督が採用するシステムとそれに伴う各選手のポジショニングといった要素も含めて、全ての練習を戦術レベルでより実戦に近い形で行なうのが最大の特色だ。*3

つまり、練習というマイクロのシチュエーションを積み重ねていき拡張していくと実践、つまり試合になるという発想。

また、実践を細分化していくと練習でも再現でき、トレーニングする領域になるということです。

この発想は非常に重要です。今取り組んでいる作業がその先にどのようなものになっているかを想像できることは、全体のシステムやそのダイナミクスを理解できることにつながります。

また、市場になんらかしらのものを投入する状況を想定し、どのような準備をしておけばよいかということができるからです。

>>日本人に教えたい 戦術的ピリオダイゼーション入門

>>FCバルセロナスクールの現役コーチが教えるバルサ流トレーニングメソッド

プレーモデルとは

サッカーがカオスとフラクタルであるという前提に立った時に重要なものは、「プレーモデル」であると前出の村松氏が言います。

では、プレーモデルとは何かといえば、村松氏は以下のように定義しています。

そのチームが目指すサッカーとしての全体像、または最終目的を意味します。チームを率いる監督が掲げるチームの理想像と考えれば、理解し易いでしょうか。

さらにそのプレーモデルは、サブコンセプト、サブサブコンセプトに分解できていくのだそうです。

プレーモデルとシステムズエンジニアリング

このプレーモデルの考え方はシステムズエンジニアリングと全く同じ考えですね。

分解を重ねてサブシステムにし、それをさらに分解し最後はLowest Configuration Item(LCI)にまで分解する。また、それらをくみ上げながら全体の出来上がりを確認し、バリデートしていく。

まさに同じコンセプト。戦術的ピリオダイゼーションはまさにシステム、そしてアプローチがエンジニアの発想ですね。したがって、そういう教育を受けていない監督には当然ながらピンと来ないでしょうね。

サッカーにおいても、サブコンセプト、サブコンセプトを繰り返し確認しながら試合をイメージしながら、実践に持ち込むということでしょうか。

まさに、「サッカーはサッカーをすることによって上達する」。

プレーモデルの前にゲームモデル?!

戦術的ピリオダイゼーションを調べているうちに、それらを構成する様相がいくつかわかりかねてますが、プレーモデル以外にもゲームモデルというのを見つけました。構成される要素は以下の様です。*4

  • Players' Capabilities(選手の能力)
  • Club's Structure & Aimes(クラブの構成と目的)
  • Club & Country Football Culture(クラブとその国のサッカー文化)
  • Moments of the Game(試合の局面)
  • Structual Organization (組織構造)
  • Coach's Ideas(コーチのアイデア)
  • Principles & Sub-principles of Play(プレーの原則とサブ原則)

というような具合です。観る感じ、ゲームモデルはプレーモデルよりも上位の概念のような気がしますが、もしかしたらパラレルかもしれません。

Moments of the Game

さらにMoments of the Gameも同じ資料の中でさらに細分化しています。

  • Offensive Organization
  • Transition from Defend to Attack
  • Deffensive Organization 
  • Transition from Attack to Defend

というような具合です。さて、プレーモデルはどこにポジションするのでしょうか…。

繰り返し練習することでのメリット

その一方で、戦術的ピリオダイゼーション理論の肝は、"trained(訓練される)/learned(学習される)"だということで、経験値が重要といっています。

つまるところ、この理論の一連の練習を反復して繰り返していくうちに、実際の試合において目まぐるしく変わる局面ごとで、チームとしてどのような動きをすればいいかを、各選手が理解できるようになるわけだ。*5

監督の指示を理解できない選手も多いのでしょう。これはサッカーに限りませんが、これが現実。

これを採用するコーチたちは、「どうしたらできるかを分からせる」というニュアンスで語る。*6

サッカーに限らず、試験勉強にも役立ちそうです。

また、記事を執筆するアナリストやジャーナリストも読者が読む時間帯やペースに合わせて記事を書いてみるもの面白いかなと。大体、夜に書くのが普通でしょうから。

アナリストも決まった時間に集中して書いてみると結果は違うのだろうか。検証してみたいですね。

もっとも大きな特徴は、練習時間が試合と同じ90分間に設定されていること。ポイントはブレイクタイムもほとんど取らないことで、常に高いインテンシティーを保つ。*7

トレーニング方法について

トレーニングの大半を占めるグループ練習は、ショートパスによるポゼッション、ロングパスを交えたカウンター、4バック、3バックなどシチュエーションごとに行なう。その際に大切なのは、チームが掲げるプレーモデル。実戦を想定してポジショニングを事細かに修正しながら、各選手に局面ごとの役割を理解させるのだ。*8

ポゼッションの持つ意味

しかし全ての面においてより実戦に近い練習を導入するL・エンリケの場合は、そうしたポゼッション練習の際にも、より試合に即した形で選手たちを配置し、いかにオープンスペースを有効活用して相手ゴールに攻め込むかという点を重要視する。ポゼッションを「目的」とするのではなく、あくまでも「ゴールを奪う手段」として意識づけするためだ。*9

これは川崎フロンターレ・風間八宏監督も同じことを必ず言いますね。ボールを使わない練習はしないというのも同じ。

もちろん、川崎Fが調査して取り込んだともいえますが、強いチームの練習法の共通項ともいえます。

目指すはいつも同じだがタテへの速い攻め

で、結局は何を目指すかといえば、タテへの速い攻め。守備を崩せる可能性が高くなるわけですから、早いタテへの攻めができるのには越したことがない。

最後に

戦術的ピリオダイゼーション理論自体は30年以上前に開発されたものだし、モウリーニョがメディアに向けて話をしているのが2000年の前半から中盤であることを考慮すると、この理論自体はすでに10年以上練られた状態にあるわけで、日本サッカーがこれらを自分の血なり肉にするためには、周回以上遅れている印象があります。

ただし、川崎フロンターレでも風間八宏監督はこのコンセプトにかなり近い練習をしていたようですし、それを5年もかけて積み重ねてきたことを考えると、グローバルスタンダードの土俵に立つためにはこのコンセプトを知っていて実行できるというのがまずはスタートラインに立つことかなと思われます。

サッカーダイジェストの記事も超面白い記事だ!とおもったらやっぱりというか、翻訳でした。日本のサッカー記事の文学的表現を使ったレポは冗長的で字数のわりに中身がないので、こういう記事をたくさん読みたいものです。