「精神論抜きの電力入門」:政府の東電処理が残した電力業界への波紋
- 作者: 澤昭裕
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/08/14
- メディア: 単行本
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澤昭裕「精神論抜きの電力入門」新潮社を読み終わりました。
政府の東電処理のいきさつやその業界への影響が分かりやすく書かれています。
無限責任を問われることになった原発事業を今後誰が扱うのか。
各電力会社は原発の再稼働を盛んに準備しています。
しかし、各電力会社が東電処理で無限責任となった原発を本気でやりたいと思っているかは個人的には疑問です。
短期的な収益の悪化はともかく、原発を電源ポートフォリオから外したいと思っているのではないでしょうか。
311後の東電の経営者の扱いをみて、他電力の経営者がそのリスクを積極に取りたいと考えているとは思えません。
一方、電力会社は原発が稼働停止している分を火力を焚き増しているのが現状です。
しかし、「言われていた」原発の発電コストよりも高い火力のコストが負担になって各社軒並み赤字です。
電力が足りているといっても電力会社の経営状況はサステイナブルではありません。
総括原価方式に従えば、価格転嫁をして利益を出せるようになるのがルールなのですが、九電なんかをみる限りは苦しそうですね。
こんな状況の中、銀行をはじめ金融機関も融資なんかしたくないでしょうね。
莫大な赤字垂れ流し、原発事業は無限リスクで債権放棄は要求される…。
電力会社もこんな状況だから設備投資も積極的にはできないでしょうし、電力産業の資金ニーズも落ちているんでしょうね。
日本が原発をどうするかの議論が残っていますが、国が引き取ってアッセットライフとともに廃炉していくのがメインシナリオですかね。
電源開発(J-Power)の大間の建設再開を許可したらしいんで、新型の炉に入れ替えていく作業ですかね。
新設は中国電力の島根3号と大間だけで、後はアセットライフとともに管理するのが基本ですね。
ただ、国が各電力会社の原発事業を引き取ったからといっても、今回の311後の政府の対応をみていて専門家に任せているから大丈夫というのは言えません。
いったいぜんたい誰が原発のリスクをとるのでしょうか。
東電の処理でも国は「援助」にこだわるくらいの引け腰で、国が原発オペレーションができんるんでしょうか。
しかし、澤氏のいうように、いきなり「原発ゼロ」というのも現実解でないですね。
確かに化石燃料だけが日本の電源のエネルギーだと言われれば、足元をみられるし、実際そうなってますね。
燃料調達からすると、交渉力をただちに失うので取るべきではない。
まあ、燃料交渉のためだけなら、ゼロではないと言えばいいだけの話ですが。
ただ、澤氏の言うように発電・送電・配電を国で一元化というのは元METIの役人の発想としか言いようがないですね。
原発対応でスマートでない政府を見せつけられた後に、一元化で対応しようといわれてもねという感じです。