泉田良輔のブログ

テクノロジーアナリストの100%私見

テーマ投資とセクター投資の違いとは。セクター投資を個人投資家に求めるのは難しい

結論から言うと、セクター投資それができるなら日本に個別株をがんばる個人がいっぱいいるはずだという循環論になる。ちなみにセクター(別)投資とテーマ(別)投資とでは意味合いが異なるのでそのあたりも見ていこう。【2017年8月29日更新】

セクター投資とテーマ投資の違いとは

セクター(別)投資とは、たとえば東証33業種(ただ分類され過ぎている)や MSCIの分類など企業が属する産業ごとに区分して投資をするアプローチのこと。

一方、テーマ(別)投資というのは、今でいえば、ロボット、ドローンやAIというように株式投資をする際のテーマに準じた投資アプローチのこと。

どちらがよくて悪いかという議論をする人がいるが、それは違う。

セクターローテーションを考えるのは機関投資家の仕事

機関投資家レベルでも日常的に議論されているのは、セクター投資の方。機関投資家もセクターローテーションというように、景気循環の中で保有セクターの持ち分を意識しながら調整をしている。

小型のマネージャーはいつもテーマを探してる

とはいえ、小型株のファンドマネージャーなどは常にテーマを探している。そのテーマというのは、一言でいえば、「産業構造を変えるテーマ」。構造を変えるテーマなので、毎日のように話題が出てくるはずもなく、長期的なスタンスでテーマを探す。

もっとも、テーマのない投資を探す方が難しい。

グロース or バリューも立派なテーマ

たとえば、グロースやバリューといった企業の利益成長率や株価のバリュエーションといった基準でのスタイルもファンドマネージャーからすれば広義のテーマといえる。

「バリューの方がグロースより絶対もうかる」というのはバリューマネージャーからすれば信仰に近いようなものだし、自分の運用のテーマそのものだからである。

インデックスファンドにもテーマはある

もっというと、株式のインデックスファンドを買うのも、投資かは知らず知らずテーマを追っている。

それは何かというと

「経済は成長する」

というテーマだ。

最近、世界株のインデックスファンドを推奨する向きが多いが、それは「世界経済は拡大する。それに伴って株価も上昇する」というロジックを信じているということになる。でないと、株式のインデックスファンドを買う意味合いは薄い。

もっとも、循環株であるTOPIXのインデックスファンドを買うというのはトレーディングをするという前提をする上では賛成であるが、長期で…というのは疑問だ。

セクター別投資は個人投資家に向くのか

 セクター別投資をうたっている本があったので、読んでみた。

以下、読後の感想と指摘事項。

内容そのものと本名?ペンネーム?

この本のイマイチなのは、経歴を見ると投資経験が長いのは良いが基本的理解が怪しいことだ。

そもそもこの執筆者の名前は本名か?ペンネームか?少なくとも私は彼らの名前は聞いたことがない。存じ上げない。

たとえば、以下の様な記述をみて、どう思うだろうか。

長期投資に関しては、ここ20年来、相場に勝てていないのが現実だ。

それは、日本株式市場が循環株式市場だったから。

まあ、大きく言えば、日本経済が成長していなかったからだ。

日本に生まれたことを恨むよりほかないが、今は世界に投資をすることができる。

彼らの話は、日本株に限定した話としては正しい。それ以外では、真ではない。

長期保有が投資のカギなのではなく、銘柄選択がポイントである。 

 長期投資を推奨する方も長期で投資をすれば儲かるのではなく、銘柄選択をし、成功した際に長期で持っていれば非常に大きなリターンがあるということと同時に、長期で個別株と向かい合えば、いろいろなチャンスがあるよと言っているだけである。

つまり、銘柄選択がスタートでの長期投資である。もともとの問題定義をすり替えている。ミスリード。

後講釈ならなんとでも言える 

いやー、これはすべてに言えること。

個別銘柄選択に限らず、セクター投資でも同じでしょ。

セクター情報は本書だけでは物足りない

あと、この本の業界ごとのデータを基に勉強しても足りない。

電機セクターを見たけれど、この程度の情報ではセクターコールでエッジはない。うっかり手を出すとやられるのがおちだ。

運用でエッジを出せる領域とは

一般的に、個別銘柄ピック、セクターコール、マクロベットという順に自己調査によるエッジが少なくなる。

つまり、誰でも勝手に言える部分が増える。

あたることもあるし、あたらぬこともある。

そして、その根拠も曖昧になる。

自身の情報のエッジがなくなることとほぼ同義である。

セクター投資は投資としてはありだが、投資家としてのエッジを薄めて勝負する?

一時的なさや取りはありとして、果たして継続的に勝てるかどうか…

 投資家は自分が勝負して、一番勝機のあるところで勝負するのが基本。

イチローだって、すべてのたまに手は出さないだろう。

バフェットの投資は実績というテーマ

バフェットは、どうか。

バフェットはビジネスモデルに投資をしているというが、スタートポイントは過去の実績だ。それに歴史が重要だ。

実績に基づいて、その背景は何かというアプローチでビジネスモデルを研究している。

ビジネスモデルありきではない。

www.kabu-1.jp

海外ではセクターファンドはメジャーで巨大 

少し目線を海外に拡げてみる。

実は、米国ではセクターファンドに巨大なファンドがごろごろしている。

加えてセクターファンドの投資信託の品ぞろえも充実している。

フィデリティにも優良なセクターファンドとそのマネージャーが存在する。

実はセクターファンドのファンドマネージャーの方がダイバーシファイドのファンドマネージャーよりも優秀と言えるかもしれない。彼らはそれこそスペシャリストであるからだ。

一方、日本にはセクターファンドの品揃えが少ない。供給サイドの問題もある。

テーマ投資に冷ややかな日本

NIKKEI STYLEにも書かれているが、これまでの日本のテーマ投資の印象は良くない。

style.nikkei.com

それもそのはず。

株式市場で話題の熱量の高い内容と関連銘柄を組み込んだファンドを売り出してきたからだ。

ただ、上でも言ったように、そうした「狭義」のテーマの是非はともかくとして、広義のテーマ、特に産業構造を変えるようなテーマはどの投資かも垂涎の的だ。

「テーマだからいかがわしい」というのでは、せっかくの投資チャンスも逃してしまう。

そのあたり、ジム・クレーマーなんかはすごくバランス感覚が良いコメントをしている。クレーマーは「全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦」の中で、「ブームや人気を利用しない手はない」というパラグラフで、以下の様に言っている。

私が合法的な方法で投機を使って皆さんを金持ちにできるのなら、たとえそれがアカデミックな教えに反するやり方だと非難されても、全く意に介しないでやり通してほしい。

投資を良く知っている人は確信犯的に株式市場の熱量を利用する。

興味のある人は、ジム・クレーマーの著書はおすすめ。

まとめ 

散々パラ書いてきたが、投資は自分で特異な領域で勝負すればいいだけの話なので、個別企業分析でもよいし、テーマに目鼻が効くのならそれでも良いし、セクターローテーションが分かっているのならそれでも良い。

何が正しくて、何が間違っているというのは、アプローチの幅を狭めること自体、得策ではない。

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