泉田良輔のブログ

テクノロジーアナリストの100%私見

AI(人工知能)時代のアナリストは生き残れるのか?生存できるとすればどの領域か

2017年も大みそかということでもあり、ここ最近でてきたAIで証券アナリストやファンドマネージャーの仕事が奪われるんではないか議論もあるので、プロ投資家の役割と今後の付加価値はどこにあるのかについて考えていきたいと思います。

はじめに

個人投資家向けにLongineをはじめた5年前は、アナリストやファンドマネージャーの仕事がここまで機械にとってかわられるなんていうことは、はっきりいってあまり想像しませんでしたね。

せいぜい、相場の浮き沈みでアナリストのポジションが増えたり、減ったりということぐらいで、そこまで真剣に考えるということはなかったのではないでしょうか。

ところが、ヘッジファンドだけではなく、一般投資家も身近な投資信託でもビッグデータを機械に食わせて、その分析に基づいて銘柄を抽出するなどというファンドもいくつかすでに出てきており、ゴールドマンサックスのファンドなんかはかなり売れています(信託報酬は高いですけどね)。

アナリストの仕事とは

大きく分けると3つに分けることができると思います。

  • 分析(アナリシス)
  • 予想(エスティメイト)
  • 値付け(バリュエーション)

基本はこの3つです。

分析は、大量のデータ・情報をインプットし(基本は読み込むこと)、その内容を分解していき、「何が何をそうさせているのか」というのを突き詰めることだと思います。

そして、その分析に基づいて、分解して決め手になる要素を統合していき、全体像を予想するという作業に行きつきます。

この辺りはシステムズ・エンジニアリングの分解と統合の作業にぴったりです。

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AIでどこまでできているのか

さて、AI運用の現場の話を聞いていると、現在のAIではおそらくこの第2段階までできていて、ここに人間の投資判断のパターンを埋め込んで最終的にはAIの投資判断としているのだと推測します。

もっとも、この時点の人間の判断というのはファンドマネージャーやアナリストの判断パターンを入れているので、その参考にしている人間のレベルが低いと、最終的なアプトプットが知れているということにはなりますが、その水準も時間とともにアップグレードしていくと考えるべきでしょう。

ということで、アナリストの3つのプロセスのうち、2段階目までは概ね機械で代替されているし、その精度は機械の方が上といえるでしょう。

今後生身の人間が戦う領域とは

では、現在、人間のアナリストの付加価値は何が残されているのかというと、最後の値付けの部分でしょう。

「この銘柄の適正株価はXXX円。よって買い(とか売り)」

というような投資判断をまだ機械「自身」がしきれていない(というか人間のこれまでの知見の一部がアルゴリズムとして活用されている)、という状況だと考えていて、そこはまだ人間が判断する付加価値が残されているのかと。

とはいえ、この領域も近いうちに機械が自分で判断をして投資判断をするようになる、という時代も当然あり得るわけで、その際に機械とどう戦うのかと。

プロ投資家はどこで付加価値をとるのか

ひとつあるのは、機械が判断するためには大量のデータを食わせないといけないわけで、そこをつくのだとすると、データの少ないIPO直後の株や公開情報の少ない中小型株というのは引き続き人間が判断しても勝てる領域は残るであろうということ。

あと、これは有名なファンドマネージャーにフィデリティ時代に学んだことですが、「株は変化だ」ということ。

これは株で儲けるためには、凪いでいる海ではなく、潮目を見逃すなということ。たとえば、経営者が変わることや業績が大きく変わる(←これらがポイント)といった変化点をどう判断するか。

非連続の変化点

過去と「非連続の変化」に対して機械が確信をもって判断することはできないでしょう。だとすれば、そこは人間の目利きであったり、過去の経験や知見を拡張して活用する領域が残るということになります。

過去との非連続の状況が儲かるというのは、これまでと変わりがないですが、いわゆるアノマリー的なデータに基づいていえてしまうパターン系は機械にとって代わられるし、その方が漏れがないので任せてしまえばいいと思います。もっともそうした領域が得意だったファンドマネージャーの仕事はなくなるわけですが。

まとめにかえて

ということで、私自身はテクノロジーセクターのアナリスト経験が国内外株を含めて最も長いわけですが、細かな技術を追うよりも、様々なセクターの(そう、セクターにこだわっていてはだめだということ)会社のそうした変化を追う方が儲かる時代になってきているのではないかと感じています。

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