『スラムダンク』にみるチーム形成と戦略。UCLAバスケットボール元監督ジョン・ウドゥンから
『スラムダンク』の安西先生のモデルともいうようなジョン・ウドゥン(John Wooden)。ウドゥンは元UCLAのバスケットのコーチです。
彼のバスケットボールの考え方が示されたのが本書 “Practical Modern Basketball”で、Woodenのバスケットへの取り組み全般、コーチング、戦略などが詳細に書かれています。今回は、その内容について見ていきましょう。【2017年1月30日更新】
バスケットはシステムだ
Woodenはバスケットを「システム」として認識して俯瞰しているのが特徴です。「プレーヤーのセレクション」の中で、プレーヤーを選ぶ際にもシステムを意識しています。
- 候補者の中から最高のプレーヤーを選ぶ
- プレーヤー一人ひとりの適切なポジションを決める
- プレーヤーのコンビネーションを決める
- 控えプレーヤーを決定するが、必要に応じてポジションの再編成を考える
- 最善の結果を得るために、必要なプレーヤーとその人数を決定する
と、こんな具合です。
つまり、プレーヤーの5人だけを選ぶのではなくシステム全体の最適を考えています。
当たり前だといわれればそれまでですが、米国のトップコーチはこうした思考ができています。
バスケットボールの戦略
さて、本書で引用されているジョン・バーンの『バスケットボールの方法』の戦略の定義は明確。
- 相手のペースでプレーさせない
- 相手がやって欲しくないと思っていることをする
- どのような状況の変化にも対応できるように準備しておく
としています。
まあ、3は難しいかもしれませんが、1と2は具体的にイメージしやすいのではないでしょうか。
戦略を議論する際に、1と2だけを徹底的に分析するのでも意味がありそうです。
ファンダメンタルズを理解すること
スポーツ医学から『スラムダンク』をまじめに分析した本があります。
辻秀一『スラムダンク勝利学』を読んでみると不思議とWoodenも辻も同じことを言っています。
それは「チームがファンダメンタルを理解すること」の重要性です。
理解するものとしては、第一に共通目標。そしてチームにおけるルールです。
「ルールを理解したうえで、それぞれが自由に個性を伸ばせるかは、チーム理念による」
としています。
チーム理念とは、形式的なルールではなく、「精神面のルール」ということです。
バスケットも結局一つの組織であり、システムということができます。
そのシステムも最後は定量的なものではない、個の意識というのが重要のようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本のスポーツを考える際に、「システム」としてチームが同機能するか、またその中で「個」がどのように機能するかを考えるのが重要です。
システムが先か、個が先かという議論が常にありますが、どれほどシステムとして理想的であっても、その一部を構成する「個」が脆弱ですと、そこがすべてのベースとなってしまいます。スポーツの実践の現場でいわれれば、そこが狙われます。
もちろんその「個」を強化するという長期的な目標もあってもよいかと思いますが、その「個」をモジュールとして扱い入れ替えられるということもまた監督などからしたら重要でしょう。
「個」か「システム」かではなく、「個」も「システム」もなのです。