「戦略不全の因果」-企業が停滞しているのはサラリーマン経営者が増えたから
サラリーマン経営者が当たり前の日本だが、それが日本企業、ひいては日本経済の成長低迷の原因とすれば、相当時間がかかりそう。それを一気にひっくり返そうとすれば、必要なのはメガベンチャーが出現し、あらかた飲み込んでいくことだと思うが、ソフトバンクは果たしてそのコンテキストに該当するだろうか。【2016年12月2日更新】
専門経営者とは
致し方ない話だが企業の利益が停滞しているのは本書は「専門経営者が増えたから」としている。
聞きなれない専門経営者とは何か。
日本では極めてよくある話だが、従業員から経営者になったサラリーマン経営者である。
創業経営者が代替わりして、所詮イエスマンが経営者になっても大したことはできないだろと著者。
おお、手厳しい。三品教授にいつもそんな目でみられる経営者はかわいそうだが。
創業経営者のサラリーマン経営者の選択眼は怪しいと
おまけに創業経営者が専門経営者でいい人材を選ぶ打率が低いとのこと。
社内で人材を選ぶということ自体選択肢が限られているので仕方がないかもしれないが。
一旦サラリーマン経営者に経営のかじ取りがまかされると、経営陣の高齢化が始まるとしている。
任期は5年程度に落ち着き、任期内で問題を解決しようとするため瑣末なテーマに時間を費やしてしまうと。
新卒採用はコミュ力のある人材、決してクリエイティブというのとは違う
将来の経営者の候補となる採用についても重要な指摘をしている。
新卒採用については、採用する側が自分の部下にしたい人材を上にあげる。
つまりはコミュニケーション力のある尖っていない人材があげられてくる。
事業ポートフォリオを変えるというような気合の入った仕事ができる人材はそこにはいないだろと。
なるほど。
経営者は仕事では鍛えられない
また、経営者は仕事で鍛えられないと言っている。
伊藤忠の丹羽社長のアメリカ時代を「彼は仕事をしていない」と言っている。
(この三品教授という人、結構面白いかもしれない)
そうあの尖閣問題で超冷静なインテリジェンスをした元中国大使の丹羽氏だ。
彼は30歳代前半で自分の選ぶ「立地」に事業を構築する機会を与えろと言っている。
(サイバーエージェントがにたようなモデルかもしれない)
三品教授の社外取締役による指名委員会方式の指摘は極めて正しい。
「前任経営者が後任経営者を個人的に指名する習慣を正当化する形式と受け止めるべき」
と指摘。
(おっしゃる通り)
まとめ
この問題を一番抱えているのはソニーだ。
さて、彼の結論で合意できなかったところが一点。
彼の理想の経営者の選任プロセスは「指名委員会を更に中立化した機関」で合議制で人選するという。
一体どんな機関をイメージしているのかは分からない。
経営者のパフォーマンスはマネジメントする企業の業種を選ぶのかは分からない。
事業内容を熟知していない指名委員会でその会社の将来を描ける人物を任命できるのか甚だ疑問。
ガバナンスの問題は常に付きまとうが、現経営者の仕事は正しい後継者を選ぶことだと思う。
まあ、これは会社の哲学なので、賛同できない会社の株は買うなということ。
それだけの話。