「決算書の50%は思い込みでできている」

- 作者: 村井直志
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/03/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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我が意を得たりというタイトル。
会計士の自殺を含むりそなの国有化の件や三洋電機独自ルールによる粉飾決算の例は面白い。
会計は書き手の思いがおもいっきり入り込む余地のあるアート。
決して「純」ノンフィクションというわけではなく、ストーリーを含んだ「準」フィクション。
決算という過去の事実に対しての数字であるのに、未来の「見積り」が入っているからだ。
経営者にも会計士にも未来なんて言い当てることはできないし、それは投資家も同じ。
景気が悪くなり、企業の赤字が出るようになると投資家の心配事は繰延税金資産の取り崩し。
繰延税金資産は将来の収益見通しが考慮される。
BSの左側の株主資本にとってみれば右側の繰り延べ税金資産じゃ「張り子のトラ」。
BSの右側は究極はキャッシュ以外信用できないのが第三者のつらいところ。
ただ、総資産と株主資産が同じ金額だったりすると上場企業は投資家にいじめられる。
「もっとレバレッジをかけて、リスクを取れ」とか、
「配当をもっと出せ」とか、
「自社株買いしろ」とか。
経営者も投資家にリスクをとれと言われて、借入でM&Aをしたりする。
そうすると今度は、
「のれんはどうなってる?」
とか、借入でといっているのにもかかわらず、
「増資はしないだろうな?!」
とか、しつこく質問攻めにされたり、念を押されたりする。
一応聞かなきゃいけない投資家も痛いが、経営者も大変だ。
のれんの処理は買収した直後はどうしようもできない。
買った本人は将来の収益見通しをもとにフェアバリューだと思って買収している。
買収直後に直後に「高い買い物でした」なんて言うわけがない。
いつも議論はかみ合わない。
お互い自分の考えと前提で話をしているからだ。
いつもはこの手の話はほとんど時間の無駄。
まあ、オリンパスのようにわざと高く買っていたケースもあるが。
減損も外からは分かりにくいものもある。
時価がつきにくいモノが対象の場合は、本人がギブアップした時にしか実現しない。
ここまで来ると本人のやる気と意志の問題だったりして、分析の次元を超えている。
こうしてみると実はだれも正確なBSを把握できていない。
この状態は企業は大きくなればなるほどその可能性が高くなる。
CFOとはまじめにやれば本当に難しい仕事。
ただ、CFOの中にも確信犯的な手錬が存在する。
投資家向けに中期経営計画(中計)を発表する会社は多い。
たまに「それは無理でしょう」というような計画を出す会社も存在する。
それは、投資家向けではなく、実は監査法人や銀行向けだったりする。
将来の課税所得だったり、コベナンツを意識してのことだ。
正直実務に携わっている人が出してきた計画に突っ込みをいれるのは相当準備が必要。
無茶な計画を出す背景には、彼らをけむに巻こうという意図が透けて見えてくる。
中計は実は企業のあせり度合いを示す使えるリトマス試験紙だったりする。
決算も中計も似たりよったりか…。
投資家というのもいつまでたっても弱者。