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泉田良輔の考えたこと

ノマドアナリストが株式投資, テクノロジー, エネルギー, FinTech, メディア, サッカーをテーマに.

パナソニックの最終赤字はなぜ7650億円なのか:キーワードは監査法人と日立

津賀一宏社長、相当気合の入った経営者とお見受けしました。

普通の経営者であれば監査法人とネゴってここまでの下方修正は受け入れないでしょう。

(もしくは監査法人に相当詰められたかですが…さすがに天下のパナソニック様なので)

津賀社長も今年度が社長初年度なので本当に新たなスタートを切りたいのでしょう。

また、この結果は津賀社長が作ったことでないことも理解しています。

しかし、これは株主にとっては最悪な意志決定です。

説明資料に「キャッシュアウトはない」と書かれています。

それは事実です。

ただ、株主資本が棄損している事実は変わりません。

この表現は先日繰延税金資産を取り崩したソニーと同じです。

この事実に対して経営者と株主に大きな温度差があります。

株価評価(バリュエーション)の中で株主資本は重要な前提となります。

これを棄損することがどれだけネガティブかを経営者は理解していません。

(頻繁に使われるのはROEとPBRの比較です)

株主資本は積み上げるのが前提で、棄損するのはもってのほかです。

「決算書の50%は思い込みでできている」にあるように、繰延税金資産、のれん、無形固定資産は将来の見通しが前提です。

決算書の50%は思い込みでできている

決算書の50%は思い込みでできている

これらを取り崩すということは経営者が監査法人に自分たちの事業見通しを説得できなかったと同じ事です。

将来の話ですので、正確には誰も言い当てることはできません。

ただ、事業での戦略がどの程度合理的で分かりやすいかがポイントです。

その説明ができなかったというのは言いすぎかもしれませんが善管注意義務違反ではないでしょうか。

経営者が実際どこまで株主のために戦ってくれたかを知りたいものです。

日本の経営者はよく「V字回復」という言葉を口にします。

津賀社長もそのイメージは持っていると思います。

一見前向きのような響きがしますが、株主には百害あって一利なしです。

本当は継続的に利益を稼ぎだしてくれればよいのです。

利益成長があればベストですが、ない時期があってもかまいません。

赤字だけが困るのです。

株主は誰も「V字」の業績なんて望んでいません。

これは経営者のエゴ以外何物でもありません。

さて、今回の下方修正での最終赤字はなぜ7650億円なのでしょうか?

私の推測の域を出ませんが、日立製作所の2008年度の最終赤字を越したくないからです。

リーマンショック後の日立の最終赤字は歴史上最大の7873億円。

(日立の巨額の最終赤字もほとんどは繰延税金資産取り崩しによるものです)

パナソニックはこの水準を上回ってしまいますと歴史に記録が残ってしまいます。

7650億円というのは7873億円の赤字を超えないぞというメッセージなのでしょう。

(ちなみに2011年度のパナの最終赤字は7721億円)

私が経営者でもこの後ろ向きの記録保持者にはなりたくはありません。

さて、2012年9月末の株主資本は1.15兆円になりました。

会社の見通しですと下期も最終赤字が800億円になることから3月末には1.07兆円になります。

時価総額が1.26兆円ですから、PBRは1倍をまだ越えています。

2013年度のROEの水準にもよりますが、現在の市場でPBRが1倍を超えるのはそれなりの理由が必要です。

株式市場はさらなる取り崩しを懸念するかもしれません。

今こそ経営者は自分たちの競争力は何でどこに経営資源を投入するかを語らなければなりません。

実は答えは見えています。

インバーターを軸とする省エネ技術です。

パナソニックは自分たちのインバーター技術がどの程度海外のメーカーと比べて優位にあるかを語らなければなりません。

それはどの程度競合をまじめにベンチマーキングしているかを説明することでもあります。

そしてその事業は大きな設備投資を伴わないということを言うべきです。

また、「家まるごと」戦略を実現するためにはハードの局地戦を勝ち抜かなければなりません。

「家まるごと」は原因ではなく戦略を実行した結果です。

「家まるごと」は戦略ではありません。

私の家の屋根には今回減損の対象になったパナソニックの太陽光パネルがのっています。

パナソニックサステイナブルな企業であることを切に望みます。