個人投資家やIRには必読の本。フィデリティのアンソニー・ボルトン「カリスマ・ファンド・マネージャーの投資極意」
アンソニーは、個人的には同じくフィデリティのピーター・リンチよりもすごい運用者と思う。長期に渡ってパフォーマンスが出ているだけではなく、個人的にも話をしたり、アンソニーのホストするミーティングにも出たことがあるが人物も素晴らしい。社内外の人に尊敬される人物だ。古き良き英国の紳士。
アンソニーの投資哲学解説書
さてそのアンソニーが本を出している(発音はアントニーというのが自然)
はじめ見た時は、なぜアントニーが本を出すのかなと思った。
中を読めばわかるが、自分が欧州のファンドを引き継ぐタイミングで書かれている。
自分の投資スタイルと過去の体験に加えて、自分のファンドを引き継ぐ運用者の解説つきだ。
Investing with Anthony Bolton
元のタイトルは、Investing with Anthony Bolton
実は、当の本人が書いているのは、1章と4章のみ。
まあ、2章しかないとみるか、2章分と見るかは人次第。
私は2章もという感じだ。
個人投資家はすべからく目を通すべき内容だと思う。
IRの人も、一度読んでみれば(1と4章だけでよい)、本当に優れた運用者は何に興味があるのか理解できると思う。
日本の機関投資家の水準とはえらく違うのに驚くはず。
アントニーのアプローチはこうだ。極めてオーソドックスである。
基本は取材を大事にするー多くの運用者やアナリストが忘れた基本。
社内の人間だけではなく、社外のネットワークも大事にしている。これは社内(アナリストといった)リソースだけでは足りないという意味。
耳の痛い人もいるだろう。
証券会社のいわゆるセルサイドアナリストもコンセンサスに影響のあるアナリストに会う。
証券アナリストのレポートには本当に大事なことは書いてない…という本質。
ベンチマークなんて関係ない
運用の際には、ベンチマークを意識していないとも。
これは普通の運用者には難しい。
こうしたこともあって、年金運用は面倒だといっている。
失敗した投資にだけ、細かく突っ込まれるからと。
その点投資信託はいいといっている(ここまでのびのびといってもよいのか?!)
大事なこといくつか
個人投資家が一番注目すべき点。
投資というのは一種の賭けです。…誰もがミスを相手より少なくするよう頑張っています。
つまり、一部の投資でシコっても、それを前提として運用に臨めと。
パフォーマンスの出し方についても、バフェットに共感している模様。
私のアプローチの核心は、ウォーレン・バフェトとそのパートナーであるチャーリー・マンガーが「恒常的に年率12%を目指すよりは、長期的に平均して年率15%収益を上げたい」と言った言葉に要約されています。
時間を味方につけるという意味です。
スペシャル・シチュエーションとは
アントニーからはじめて「スペシャル・シチュエーション」というコンセプトを教わりました。
スペシャルシチュエーションとは、会社が有事にあるということです。
その有事とは次の通り。「株は変化が一番儲かる」という運用者がいましたが、ほとんどそれですね。
- 回復の見込みのある会社
- 大きな成長が期待できる会社
- その価値を一般的に認められていない資産を持つ会社
- 特別なニッチ市場に特化した製品を持ち、良好な収益が期待できる会社
- 買収される可能性がある会社
- 再編、または経営陣が交代する可能性のある会社
- 証券会社の間であまり調査されていない会社
上の条件にも含まれる項目が多いが、バリュー投資がアントニーはお好みだ。
そのバリューが認められるきっかけを待ちながら銘柄調査をする。