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泉田良輔の考えたこと

ノマドアナリストが株式投資, テクノロジー, エネルギー, FinTech, メディア, サッカーをテーマに.

「原発とレアアース」:原発事業は既に民間でどうにかできるレベルを超えている

原発とレアアース (日経プレミアシリーズ)

原発とレアアース (日経プレミアシリーズ)

レアアース資源と原発エネルギーのインテリジェンス本。

海外の原発動向やプラントメーカーを理解するのには超お薦めです。

311以前でもなぜ日本の原発事業が世界で飛躍できないかを詳細に詰めた内容。

(ただ、著者本人の推測も入っているので一つのインテリジェンスとして読むと良い)

先進国もこれから原発を導入する新興国も使用済み核燃料の後始末は悩みの種。

ロシアはそのバックエンドのソリューションを提供できるがゆえに新発受注をできてきたと指摘。

そのソリューションはロシアの炉を採用すれば使用済みの核燃料は全量引き取るというもの。

このスキームであれば、新興国も安心して原発を導入することができる。

米国も核拡散防止上の観点からも、このロシアのスキームを気に入っているようだ。

ロシアが2005年にイランとの間で使用済み核燃料返還条件付き核燃料供給協定締結。

イランでは常に核開発問題が取りざたされている。

このスキームであれば米国もイランの核保有を抑制できると考えたのだろう。

一方日本は東芝が2006年にウエスティングハウス(WEC)を買収をしている。

国内で原発事業が縮小するのを海外の成長で補うためだ。

WECのプラットフォームがあれば、国内のリソースを活用できると踏んだのだろう。

しかし、ロシアのような使用済み核燃料の全量引受まではコミットできない。

六ヶ所にみられるように、国内の使用済み核燃料の処理や保管すら困っている。

東芝がWECを買収したからといって他国の使用済み燃料までは受けられない。

また、フランスのアレバは核燃料の再処理を行っている。

(ちなみに六ヶ所の技術もアレバのもの)

ただ、MOX燃料を製造する際の不要な高レベル放射性廃棄物は顧客の元に返還される。

ロシアのロスアトムとアレバとはここが決定的に違うことになる。

アレバといえども使用済み燃料の全量引受はできていない。

今後も使用済み燃料引受が競争力の大きな要因になるのであれば、日本勢にはどうしようもない。

東芝はロスアトムとは違いバックエンドでは打てる手が限られている。

しかし著者の推測が事実であれば東芝はフロントエンドでは戦略を持って動いた。

不運なことにロシアの圧力により東芝の書いたシナリオは大きく崩れることになる。

日本と協力関係にあったカザフのカザトムプロムのジャキシェフ社長が逮捕されたのだ。

しかし、前提が大きく変わる中でも東芝はフロントエンドの事業を確立しようと模索したのが見て取れる。

ただ、燃料事業で立つ回れるのはフロントエンドだけだ。

バックエンドで勝負してくるロシアにはなすすべがない。

この状況をイノベーションと呼ぶつもりはないが、ビジネスとしてはロシアが上手だ。

それにしても本書のインテリジェンスが正しければ、ロシアのカザフつぶしは圧巻。

このように原発事業は国家の思惑を理解しなければ予測できない。

原発にかかわる民間企業の経営者でもマネジメントしきれるものでもない。

ましてや私を含めて株のアナリストにはお手上げだ。