ビジネスモデルをデザインすることと単に理解するということは次元が違う
大学院に入学しデザインを勉強して、早くも9ヶ月が経過。
ただし、デッサンを勉強していたわけでもなくモノを作っていたわけでもありません。
システムのデザインです。
さて、証券アナリストとして一番興味があるシステムがビジネスモデル。
ビジネスモデルも様々なバチューチェーン内のパーツから成り立っています。
研究開発、設計、調達、製造、販売、アフターメンテナンス…。
ビジネスモデルはこうした各業務が組み合わさって、メリハリがきいてできたものです。
ひとつひとつの業務は独立しているのではありません。
バリューチェーンは各々が関係し合い、相互につながっている立派なシステムです。
バリューチェーンのどこかが欠落してもシステムとしては成立しないです。
一部に特色を持たせることで、システムはテコの原理のように大きく躍動します。
バリューチェーンは力学、ダイナミックスが働くシステムでもあります。
そして、リソースが限られれば、どこかを押せばどこかが引っ込みます。
そうした絶妙なバランスの調整の上にまた立っているのもシステムです。
そう、トレード・オフ問題です。
メディアデザインの先生に刺激され「売れるデザインのしくみ」を読んでみました。
売れるデザインのしくみ -トーン・アンド・マナーで魅せるブランドデザイン-
この本の中では、ブランドを確立するデザインは経営戦略だといってます。
あっ、クリエイティブの世界の人も同じような考え方するのかというのが気付き。
何をいまさらといわれても私が知らなかったのはどうしようもありません。
ここでふと思います。
「日本の経営者はバリューチェーンをデザインする」という発想がないのではと。
GEやアップル、グーグルなんかを研究した人にはとっくに気付いていることでしょう。
ただし、これに気がつくためには勉強とセンスが必要です。
以前は、ビジネスモデル・エンジニアリングということばも流行ったように思います。
ところが、その手前のビジネスモデル・デザインというのは浸透しているのだろうか。
そのプロセスは多分にクリエイティブなので、非常にしんどいと思います。
日本の企業が一番苦しんでいるのは、この作業を見て見ぬふりをしてきた結果かなと。
もしくはビジネスモデル・デザインという発想そのものがなかったのかもしれません。
ビジネスモデルに工夫があるかないかは会計上の数字で一発でその判断がつきます。
私の日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか ( )を読んでいただければと思います。
そのひとつがキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。
私が4月に本を出してから、NECやパナソニックが意識的に使ってくれています。
別段、目新しくもなく、特別な指標ではありません。
ところが、これまであまり広く議論されてきた感じはしませんでした。
ですので、あえてフィーチャーしてみたわけです。
クリエイティブはしんどいとは言いましたけど、何やら近道はあるようです。
そのプロセスは不思議と結局みんな同じことをいいます。
クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST "君がつくるべきもの"をつくれるようになるために
ひねくれものの私は一歩ひいてみていますが、例をあげると次のようなものです。
ブレインストーミングだの、プロトタイプをつくれ、良いアイディアは共有…。
なんだか舶来モノのような印象がありますが、実は日本では昔から行われていました。
「えっ、どこで?」
という方は多いと思いますが、ものの本にはしっかり書いてあります。
日本固有のデザイン思考が「薩摩藩の郷中教育」がそれです。
郷中教育の中で最も重要なのが、「詮議(せんぎ)」です。
ある状況を言い渡されどう対処するかをいわされるのです(ブレスト)。
これを何度も繰り返します。
他人のアイディアに乗っかることもあるでしょう。
そして良いアイディアは当然ながら共有されるはずです。
また、龍馬史 (文春文庫)では郷中教育の特徴として「場合分け性」を上げています。
選択肢を多く持つことで、状況に応じて柔軟でかつ迅速であり得るのです。
システムには常にメインシナリオばかりが起きるわけではありません。
その対応、つまりマネジメントが重要だと考えています。
それがシステムデザイン・マネジメントということでしょ。