泉田良輔のブログ

テクノロジーアナリストの100%私見

システム設計の落とし穴:戦略は細部かつ盲点に宿る

授業で「簡単に航空写真をとるシステムを考えよ」というお題が与えられました。

これまでの航空写真は費用もかかることながら、場所も時間も制約を受けてきました。

その制約をぶち壊して新しいシステムを提案してくださいという内容です。

概要はUAV(無人飛行機)を活用し、カメラを落下させて写真をとるシステムです。

(途中からUAVの用意があることが前提になり、UAVを活用してのシステムに)

カメラ機能をどうシステム化するということに時間を割き、検討することになりました。

最後はアップルのApp Storeに遠隔操作で写真をとる無料アプリがあり利用することに。

WiFi Camera」というアプリで、私たちの実測で70メートル離れても使えます。

遠隔操作で、シャッターが切れて、かつ同時に2つのデバイスに画像を記録できます。

iOSを搭載しているハードウェアで、2つのハードにアプリをダウンロードして使います。

超便利です。試してみてください。

さて、このサブシステム自体は、難なくクリアーできました。

問題は写真をどのように撮影するかということです。

UAV自体は高速で上昇します。

UAVに固定したカメラで撮影するにはフォーカスが合いません。

結局、パラシュートを使って、カメラ自体を落下させることになりました。

ここでの問題が、パラシュートをどのように安定させて落下させるかという問題です。

このコンセプトでは、パラシュートの質がその後のすべてを決定してしまいます。

当初、こちらはパラシュートの質など全く想定していなかった項目です。

パラシュートなんて、作ったことがありませんし、どうしたら良いか分かりません。

ところが、世の中にはパラシュートに詳しい猛者がいるものです。

結局、パラシュートというのは軍事技術なんですね。

アカデミックでも決められた場所にパラシュートを落とすかがコンペであるようです。

無人飛行機はできたけれども、無人の落下傘部隊はまだないですよね。

これができれば、戦争は更にハイテク化し、人命をかけずにすみます。

コンペの内容は、

  • どれだけ正確に決められた地点に落下するか
  • 落下してどれだけ正確にきめられた場所に移動できるか

の二つがあるようです。

パラシュートは極めてアナログなサブシステムで、制御するのが難しいです。

アクチュエーターを使って、コントロールをするというのが基本発想のようです。

しかし、自然の条件に大きく左右されるのは変わりません。

当初想定していなかったパラシュートがシステムのすべてを決めてしまいます。

ボーイング787電池の不具合が問題視されています。

原因がリチウムイオン電池(とそのシステム)だとするとパラシュートと同じ位置付けです。

ニカドよりもリチウムの方がエネルギー密度が高いから良いということだったのでしょう。

問題は一旦組み込まれたシステムやデバイスを変えるのに全体の設計見直しが必要です。

おそらく、「どうせ電池でしょ」というような思いがあったんではないでしょうか。

学校で習ったLowest Configuration Itemの検証が重要との教えの通りです。

細部かつ盲点でしたね。