泉田良輔の考えたこと

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JT(日本たばこ)のM&A成功にむけた戦略と歴史的背景

日本の企業はM&Aが苦手というが一方で上手な企業もある。その秘密はぜひ知っておきたい。上手な企業の代表例としてJTがある。ただし、その背景は為替と内需逓減予想というマクロ環境変化と貿易自由化という規制緩和という外部環境の変化が後押ししている。外部環境の変化により内部が変わったというケースだ。

日本にもM&Aが上手な企業がある

日本企業がM&Aが下手といわれながら成功している企業がある。それはJT(日本たばこ産業株式会社)である。

個人的にはたばこは吸わないし煙やにおいをかぐのも嫌いであるが、JTを会社として評価するならば上手に経営されているといえる。

何が上手に経営されているかといえば、M&Aを通じて国内の内需逓減リスクをヘッジしながら海外でのたばこ需要をしっかり取り込んでいるということだ。

そんなことは当たり前だという人も多いが、その当たり前ができる会社はそう多くない。

なぜJTはM&Aに走ったのか

では、なぜJTはM&Aを成長エンジンとするようになったのであろうか。そもそも日本たばこというくらいであるから、内需関連企業で海外にそれほど目利きができなさそうではある。

その背景に関してはJT代表取締役副社長である新貝康司著に詳しい。

>>>新貝康司JTのM&A 日本企業が世界企業に飛躍する教科書 」日経BP社

以下の3点が大きい。

  • 1985年のプラザ合意後の急激な円高
  • 1987年のシガレットへの関税率ゼロ(日米間)
  • 1988年の国内需要予想(20-60歳までの人口と一人当たり名目GDP)

というように民間企業!ではいかんともしがたい環境を目の当たりにし変わらなければと思いなおしたのが大きい。

JTに限らず、M&Aが会社の成長戦略に組み込まれている企業は国内での先行きがなくなった企業に多い。

M&Aのポイント

さて、JTのM&Aでのポイントはどのようなものであろうか。同書で繰り返し出てくるフレーズは「バリューチェーン」という言葉だ。

輸出・現地販売の事業モデルから、各国マーケットでバリューチェーン全てを有する事業形態へ脱皮することが必須でした。 

*1

 というように、各地ですべてを持つことに意識を置いたM&Aを行ってきたわけである。業種は異なるがダイキンもJTに近いM&Aをしているように見える。

JTのM&Aの歴史

JTの過去のM&Aの実績からピックアップしたのが下のリストだ。

  • 1992年:マンチェスター・タバコ買収
  • 1989年:RJRナビスコから米国以外のたばこ事業買収
  • 2007年:Gallaher買収
  • 2013年:水たばこメーカーNakhla(エジプト)買収
  • 2014年:電子たばこZandera(英国)買収
  • 2015年:レイノルズ・アメリカンから米国以外の「ナチュラル・アメリカン・スピリット」買収

毎度毎度買収価格が高いのでは?!ということで株式市場でネタにされる同社。

ギャラハー買収後にリーマンショックが起き、経営者は肝を冷やしたと思う。資本市場ではクレジットクランチなどもあったと思うが、うまく乗り越えてきたなと思う。

同時に新しい技術を持つ企業にも投資をしており、あらためて目鼻が効く会社だなと思う。冗談のような話だが、たばこ会社であるのに鼻がきく。

経営者からすれば、買収価格はいつも後付けの “Given”であるであろうから、周りからとやかく言われない程度の結果を出しつつ、時間をかけながら買収前以上の効果を出していくほかないのではと思うが、どうであろうか。それにしても Well-managedということである。

まとめ

たばこを吸わないのでよくわからないが、まわりに煙たがられないタバコができれば、それはそれは十分なイノべーションかと思う。電子たばこが喫煙者に受け入れられ、普及すればその要素を十分に満たすのではないであろうか。

たばこはいまやどこに行っても規制の嵐で、新規参入したいと思う人は少ないであろう。そういう産業は基本はM&Aが主力の戦略として機能するし、そうしなければ買われる方に回るしかない。

機関投資家もたばこや軍需産業には投資をしないという人も多いので、こうした切り口を乗り越えて投資家に投資の魅力をダイレクトに伝える方法が何かを考えるのも苦労は多いであろう。配当が増えていればよいといえばそれまでだが。

*1:出所:JTのM&A p.77