「武人の本懐」を読んで
御縁あって、いただいた本
311当時は仕事で関西にいたため、東京の状況はテレビではじめて確認した。
しかし、当時京都の大きなビルにいたが、大きな揺れが長く続いたのを覚えている。
すぐにその会社の方が、新幹線は止まっていることを教えていただいた。
その日は、帰京できずにそのまま関西に宿泊。
東京湾岸で出火した映像をホテルでみたのをいまでも鮮明に覚えている。
その夜「原子力緊急事態宣言」がでているのを再びテレビで確認し、背筋が凍った。
原子力発電プラントを扱う企業も担当しており、普通の人より知識はあったろう。
海上自衛隊の指揮官の回顧録
「武人の本懐」は一般人の視点からではなく、海上自衛隊の指揮官の回顧録。
震災直後からの自衛隊の指揮官の記憶と記録が詳細に残されている。
たしかに、後世に引き継がなければならない内容である。
海上自衛隊による救助活動の難航さも詳細に書かれている。
たしかに、あれほどのがれきが海に流れ出ていれば満足に走行するのは難しい。
漁業の盛んな地域とあって網などがスクリューが巻き込む。
陸路が経たれていることもあり、海上からの輸送。その難しさ。
後から指摘されればなるほどと思うが、本書を読む前には想像もしなかった。
大きな組織になればなるほど、情報の重要性が増し、その扱いが難しくなる。
そうした中で指揮官がどう処理するかが結果を左右することが分かる。
311米国はどう対応した
また、本書で気になったのが米国の対応の描写。
当時、私は米国に本社を持つ子会社(子会社の本社は英国)に勤務していた。
したがって、本書に書かれているような情報も耳に入ってきた。
当時は、そうした情報をもとにどのように判断しようか考えあぐねた。
準備ができていないと対応できないものである。
本書は過去の貴重な記録であると同時にリスク管理がいかなるべきかを考える好著。
一番印象深いのが著者が震災当日の午前中に、第二の関東大震災の話をしていたとのこと。
ワーストシナリオはいつ時点でも更新、検討されるべき。