朝日新聞が東芝の人事ネタに踏み込み過ぎている件-改めて日立、東芝の社長がなぜ今の顔ぶれかを考える
「おーっ」と思えた記事です。
昨日と今日の朝日新聞の「けいざい深話」で東芝のトップ人事の裏側を報道。
ただ、正直、話の内容がリアルすぎることに少々ひいてしまいます。
なぜここまで具体的に書くことができるのかということに。
朝日新聞の記事は実名記事であります。
当然、記者が責任を持って執筆していることでしょう。
一方、情報を分析する側は、情報を誰がインプットしたのかが最も重要と考えています。
新聞記者もインプットする側のストーリー(思惑)に大きく影響されるからです。
そこは会社の歴史を組み合わせることでフェアに見たいものです。
さて、東芝の佐々木社長がなぜ社長にそもそも選ばれたのかを推測してみます。
佐々木さんが社長に選ばれたのは、リーマンショック後です。
西田体制時に、東芝はメモリを含む半導体事業に積極的な投資をしてきました。
また、ウェスティングハウスのM&Aも事業拡大の例ということができるでしょう。
しかし、リーマン後に世界の景気が急激にスローダウン。
デバイス事業を中心に売上が大きく減少し、固定費が高い事業の収益が大きく悪化。
そのタイミングで西田さんは佐々木さんに社長のバトンを渡します。
佐々木さんはもともと原発のプラントエンジニアです。
佐々木さんはリスクマネジメントのスペシャリストということができます。
原発はフェールセイフ(Fail Safe)の考えに基づいて管理されなければなりません。
ありそうなシナリオから外れたときに常にどう対処するかを考えるのが仕事です。
東芝は経営資源を集約させている原発と半導体のリスクマネジメントを託した訳です。
原発にしても半導体事業にしても、決してリスクが小さい事業とは言えません。
リスクを読み間違えれば自己資本が大きく棄損する可能性があるのです。
だからこそ、リスクマネジメントのスペシャリストの佐々木さんだったはずです。
世界のインフラ事業が垂直統合している中ではもっとも適切な人事だっと思います。
そうした意味では、西田さんは適切な使命を行ったことになります。
トップマネジメントの変更は会社の最重要項目が変更することもありえます。
東芝の将来を考える際には、人事は当然ながら最重要注目ポイントです。
一方、日立はなぜ中西社長なのでしょうか。推測してみます。
中西さんは大甕工場出身のインフラ制御を専門とするシステムズエンジニア(SE)です。
SEといっても、日本のITシステムのSEと海外のそれはカバー範囲が違います。
当然、スタンフォード大を出ている中西さんは、後者のSEです。
日立も創業から100年が過ぎました。
その間に日立グループは複雑になりすぎました。
(その経緯は日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか ( )を参照)
川村さんはその複雑に絡み合った日立グループをひとつのシステムとみなしたのでしょう。
「日立グループ」という大規模システムの再設計を中西さんに託したのです。
デザイン後のシステムのパフォーマンスを最大限に引き出すのが目的です。
システムには、何を残して何を切らなければならないかという問題が常に残ります。
いわゆる「トレードオフ問題」です。
事業をきるだけではだめです。
バリューチェーンの中で、何が強いのかを見極めることが必要です。
トレードオフを見出すことは誰にでも比較的容易にできるでしょう。
経営者の最後の仕上げは、それを意思決定することと実行することです。
取り急ぎ。