泉田良輔の考えたこと

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【慶應SDM/SDM学】システムデザイン・マネジメント学とは何か、どんな学問か

システムデザイン学とは何か、またシステムズエンジニアリングとマネジメントの関係性とは何かを聞かれることが多くなってきました。システムというのは物事の一面を客観的に切り出したものであると同時に主観的に作り上げていくものです。その意味合いを説明するのには、私が慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の修士課程を修了した時に読ませていただいた謝辞が最適かと思い、こちらに掲載しておきます。

謝辞

本日は、このような盛大なる学位授与式をひらいていただき、また御多忙にも関わらず、御臨席くださいましたシステムデザイン・マネジメント研究科教授陣をはじめ、多数のご来賓の皆様方に心より厚く御礼申し上げます。

私事ながら、SDMで学んだことをお話しさせてください。

システムを学ぶことは、人生にとっては諸刃の剣である

SDMに入学し、しばらくして気づいたことは、「システムを学ぶことは、人生にとっては諸刃の剣である」ということです。「諸刃の剣」というのは、システムへの理解を深めることで、その仕組みを理解する手段、フレームワークを自分の手にすることができるというメリットがある一方、世の中で動いているシステムの精巧さに圧倒され、自分一人の力ではほとんど何も影響を与えることはできないのではないかという無力感に襲われるのではないかと考えたからです。

システムに取り組むためには「覚悟」が必要

そうした無力感に苛まれることなく、システムに取り組むためには「覚悟」が必要だということをSDMで学びました。それも、一時的ではない、半ば終わりのみえない「覚悟」です。すぐれたシステムはデザインが重要であることはいうまでもありませんが、運用がどのようにデザインされているか、拡張性と柔軟性を持ち合わせているのかという点でシステムの寿命が決まっていると考えるようになりました。

たとえば、数百年続く日本の茶道のような文化から、数千年続く世界の宗教に至るまで、システムデザイナーによるコンセプトの定義だけではなく、その後の指導者の運用力によって、システムの寿命とその影響力が決定づけられてきたことがわかります。こうした時間軸をみれば、真に影響力のあるシステムを構築しようとするならば、一人の人生を費やすだけでは足りないくらいの時間が必要です。システムに携わるにはそれくらいの覚悟が必要だということです。

システムデザインだけでは足りない

こうしたことに気づくと同時に、システムデザイン・マネジメント研究科という非常に長い、研究科名の背景が理解できた気がしました。「システムデザイン」だけでは足りなかったのです。マネジメントという言葉をどうしても研究科名に組み込まなければならないというSDMデザイナーの強い思いを感じ取ることができました。

「あの世にようこそ」

また、システムデザイナーになるために必要なことは、「日常」と「非日常」を行ったり来たりすることのできる思考の柔軟性が必要だということを学びました。私がSDMに入学した際に、メンターにかけられた印象に残る言葉が、「あの世にようこそ」です。はじめは、意味がよくわかりませんでしたが、今ではよく分かります。新しいシステムをデザインするという作業は、「いま」に固執していては生み出すことはできません。一度、そうしたしがらみから離れて、真に新しいシステムはどうあるべきかを考える必要があるということです。

しかし、システムは雲をつかむようなものでは使い物になりません。やはり現実とのつながりの中で、何ができ、何ができないのかの検証が必要です。つまり、「あの世」と「この世」を自由に行ったり来たりすることのできる思考の柔軟性と実現性の検証という極めてタフなプロセスが必要だということも学びました。

SDM研究科とメディアデザイン研究科の関係

なぜSDM研究科とメディアデザイン研究科が協生館に同時に設立されたことについても気づいたことがあります。システムはマクロやマイクロといった規模に関わらず、必ずしも人の目に見えるものとは限りません。人間が、システムを理解しようとする、もしくは触れようとする際には、なんらかのメディア、つまり媒介を必要とします。システムをデザインし、運用する際にはメディアは欠かせないのです。ここまで、理解できると自分が協生館にあるSDMに入学して体験し、学んできたことが相当程度準備されていたシステムの一面であることに気づくのです。

SDMは必ず成功しなければならないという使命を帯びたベンチャー事業

SDMは、慶応義塾大学という150年以上の歴史をもち、様々な教育機関を有し、毎年8000人以上の卒業生を輩出する巨大なシステム内に企てられた7年目のベンチャー事業であると私は認識しています。実業の世界では、「30年存続できる企業は、0.02%」ともいわれますが、SDMは必ず成功しなければならないという使命を帯びたベンチャー事業だと私は考えています。

日本は課題先進国ともいわれますが、課題に直面した人が問題を解かなければ、いまある問題は誰も解いてはくれません。SDMは日本にバックグランドを持ち、慶応義塾大学に集積される知恵を活用できることで、世界にも稀に見る問題解決プラットフォームといえます。世界中でこれまでに誰も解いたことのない問題を解こうという集団ですから、必ず成功しなければならないのです。

システムは意志ある者のみが触れられるもの

システムはそれをみようとする意思なきものには見えず、システムはそれを生み出そうという意思なきにはものには設計できません。SDMという「場」で、新しいシステムを構築しようという覚悟と冒険的ともいえる柔軟性のある教授陣や仲間が集まった、極めて恵まれた「場」に私たちは参加することができ、幸運でした。

ただ、こうした機会を私たちが得ることができたのは、自分たちの努力だけではありません。私たちの研究活動を多岐にわたってご指導くださいましたSDM教授陣や関係者の方々、また日頃の学生生活をサポートしてくださった学生部の方々、ならびに研究活動を陰に陽に支えてくれた家族にこの場を借りてお礼申し上げます。

以上を慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 2014年9月修了生一同を代表いたしまして謝辞とさせていただきます。

2014年9月17日

慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 2014年9月修了生 泉田良輔

まとめ

SDMとはということに関してインタビューに応じた私のコメントも以下のリンクにあります。興味があれば、参照してみてください。特に引用した部分が言いたいことです。

SDM研究科はシステムを学べる国内で唯一の大学院ですが、そもそも日本人は「システム」の強さに気付いていない。特に「システム」を構成する一部であり、かつ目に見えるハードウエアにこだわりすぎです。SDM研究科の魅力を伝えにくいのは、こうした理由があるように思います。

campus.nikkei.co.jp

あわせて読みたい

また、システムデザイナーの歴史的な登場人物とその役割について私がシステムの歴史とそのアプリケーションについて書いたものが、以下のリンクとなります。

ジョブズが成し遂げたことの中には「システムとしての永続性」を備えた要素が多分に含まれている。ジョブズは、アップル(あるいは自分自身?)を永遠たらしめようとする極めて重要なものを残していったのだ。

問題は、そのシステムを適切かつ発展的に運用していけるかどうか、という点である。

実は、日本の歴史を振り返ると、アップルと似たようなシステムを構築し、数百年から1000年以上にわたって運用されてきた事例がある。それは「真言密教」や「茶の湯」である。今回は、アップル大躍進の原動力となったビジネスモデルを、真言密教、茶の湯と比較しながら共通点を振り返ってみようと思う。

bizgate.nikkei.co.jp

ということで、SDMを理解するための参考になれば幸いです。