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泉田良輔の考えたこと

ノマドアナリストが株式投資, テクノロジー, エネルギー, FinTech, メディア, サッカーをテーマに.

なぜ日本ではベンチャーが出てこないのかーいや少しずつだが生まれ、成功しつつあるその背景とは

日本経済が活性化するのにベンチャー企業が必要だ、といわれて久しいが、なかなかベンチャーで大きな企業が出てこない、出てきていないと嘆かれる人も多い。ただ、それは必ずしも的を得た議論ではなくて、周りをみていてもそんなことはないといえる。

そういうと、今度は世の中を変えるようなメガベンチャーが出てきていないではないか、という人もいるが、初めからメガベンチャーだと言い切れるモデルに完成している企業も少ないと思うが、どうであろうか。

若く優秀な証券アナリストが続々独立

さて、実際自分の周りを見てどうかといえば、セカンダリー担当を中心とする証券業界の若手アナリストでも、すっぱりと証券会社を辞めて起業をしたり、ベンチャーの経営に回るものも出てきている。

UUUM(ウーム)CFOの渡辺氏ももともとゴールドマン・サックス証券でエレキやインターネット企業を中心としたテクノロジーセクターのアナリストだったし、UBSで商社を見ていた竹内氏やクレディスイスでインターネットを担当していた中安氏も独立したりしている。

彼らは将来を期待された、ランキングアナリストであった。アベノミクスで証券業界は一見盛り上がって層に見えるが、実際の手数料に落ちているかどうかというのは?が残るし、若手はここぞとばかりに起業に走っている。

起業する業種はサービス業。製造業ではない

起業が増えているとはいえ、一つだけ言えるのは、その業種が偏っているということはできる。その特徴というのはやはりコンテンツも含めてサービスが多く、研究開発などを中心とした上流系は少ない。まあ、現在の日本経済全体の付加価値分布を考えてみても当然かもしれないが。

周りを見る限り、特に若い人の起業熱量は以前の2000年頭のような感じすらもする。

しかし、その背景も、ITバブル時の「なんだか時代を十分には見通せないけど、インターネットはおもしろいし、起業しておけば面白いことになりそう」というような、勢いが大半を占めるものではない。

現在では、インターネットだけではなく、ハイスペックのスマホも世界的に広がって、その上でサービスを展開すれば、とんでもないことになりそう!そしてその成功体験を持った人や企業が身近にあるというある程度手触り感を持っているような気がする。

課金・決済プラットフォーム × ハードウエア

その差はいったいなんだろうなと考えるときに、やはり「課金・決済プラットフォームの有無」の影響が大きいとみている。

皆さんご存知のように、スマホのコンテンツはとりあえずアプリをダウンロードし、有料コンテンツであれば、課金プラットフォーム上で決済される。アップストアやグーグルプレイがあることで、そのハードルは極めて下がった。

話はそれるが、アマゾン・ドットコムのすごさも、クレジットカード情報を入力させ、一度入力すればその後は基本的には決済関係の手間は限りなく少なくて済むようになった。

もちろんアマゾンのすごさは、それだけではなく、物流倉庫を自前で持ち、またデータセンターへの投資も自身だけではなく、外部も含めることで投資効率を上げているということもある。

加えて、スマホが継続的なアップグレードとともに世界共通のハードウエアプラットフォームとして広がったことも大きい。(言語対応の問題は残るが)商機が一気に世界に広がったといえる。

コンテンツは相変わらず

余談であるが、この決済とハードの組み合わせに足りていないものがある。それがコンテンツだ。2000年初めにも当然動画や音楽といったコンテンツは存在したが、十数年たってもその姿はそもそも変わっていない。

音楽はスポティファイやアップルミュージックのようにこれまでのダウンロード型からストリーミング型への配信方式の変化はあるが、別段内容が変わっているわけではない。

動画もそうであるが、個人的に言わせていただけば、視聴する時間や空間の制約がある以上、コンテンツも合わせて変わらなければ、コンテンツを消費する面は増えない。ゲーム市場がここまで大きくなったのはそうしたニーズに対応したからだと思うが、いかがだろうか。

メディアでも、スマートニュースやニューズピックスのようなキュレーションメディアも出てきているが、本丸はやはり自前の編集機能を持つモバイルを最大限活用したメディアであろう。閑話休題。

ファイナンス

ただ、そうした要素は世界中共通しているわけであって、日本特有の話というわけではない。2000年はじめと今を比較して、何が変わったのかといえば、ベンチャーのファイナンスを取り巻く環境が変わってきていることも大きい。

FIBCというフィンテックのカンファレンスで知り合いになった磯崎哲也さんはカブドットコムの社外役員などを経て、現在ベンチャーキャピタルを運営されているが、そうした2000年はじめのITベンチャーブーム経験者にファイナンス面で適切なアドバイスをしてもらえるような機会が増したことも大きいと思う。

磯崎氏に以前ご献本いただいた本「起業のファイナンス 増補改訂版 ベンチャーにとって一番大切なこと 」をあらためてじっくり読まさせていただいたが、事業モデルの組み方から資本政策、コーポレートガバナンスまでを丁寧に解説してあることがわかる。

こうしたファンナンス面での知識というインタンジブル・インフラも地味に起業機会には効いてくるとおもう。その意味で、今の起業熱が一時的なブームでないとみているが、そもそもアベノミクスで景気が良くなったから、というのでは身もふたもないが。