NECの決算説明会で証券アナリストは何を質問すべきであったのか
2013年度の減収・減益ガイダンスはさておき、ポイントは新中期経営計画。
新しい中計を遠藤社長が自身で説明するという貴重なシチュエーション。
公開情報(OSINT)で勝負するインテリジェンスにとってはもっとも重要な機会。
私に質問することが許されるなら、以下のような質問をします。
ポイントの1つめは、「売上の規模を追うことをやめたこと」
これまで「4兆円」という数字を強調していたのに対して、3兆円プラスアルファ。
成長を目的にすると、戦略がぶれます。
まさに、「成長は結果であり目的ではない」
(詳しくは、日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか ( ) を参照のこと)
なぜ、遠藤社長は4兆円の目標をとりさげたのでしょうか。
そもそも前回の中計から、4兆円の目標を疑問視する声は多かったように思います。
今回、何を「きっかけ」にトップがあきらめたのかを聞くべきです。
ポイントの2つめは、ハイブリッドファイナンス(劣後ローン)。
ハイブリッドファイナンスとなっていますが、劣後ローンです。
一体、金融機関から利率は何パーセントで借りるのでしょうか。
東芝も前回の増資の際に劣後ローンを組んでいます。
その際にも、誰から何パーセントで資金調達できるかが議論になりました。
調達資金の一部(50%)に関して資本性を認められます。
ぱっと見、バランスシートが改善するイメージがあります。
しかし、通常のファイナンスとはいえないでしょう。
今回、なぜ劣後ローンを選択したかなどの背景を聞くべきです。
ポイントの3つめは、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)。
キャッシュフローの改善の目標としてCCCを持ち出してきました。
CCCはあまり一般的ではありませんが、CFOにとっては基本です。
グローバルプレーヤーは、じつはCCCをみれば一目でどこに強みがあるかわかります。
(詳しくは、日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか ( ) を参照のこと)
NECは現在の51日を40日程度にするとしています。
CCCを算出する際のどの項目が改善するかを聞くべきです。
ポイントの4つめは、「eインフラ」をどのように海外で伸ばしていくかの戦略について。
世界の産業は垂直統合化しています。
インフラで事業を伸ばすには、ハードウェアで圧倒的に強い事業が必要です。
そのキーとなるハードとは何かを聞くべきです。
品揃えが広いということだけで、インフラの顧客は選んでくれません。
グローバルでNo.1のハードがあるか、長期のファイナンスができるかが鍵です。
(詳しくは 日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか ( ) を参照のこと)
実は、NECの狙っているインフラ事業の競合は日立や富士通だけではありません。
いまや、IBMとグーグル、アマゾンまでもが競合です。
彼らと比べて、どのような競争優位がどの事業であるかを聞くべきです。
NECが過去成長してきたのは、電話という成長アプリケーションがあったからです。
それもNTTやNTTドコモが日本語の通じる巨大な客であることが幸いしました。
海外での成長を考える際には、何をアプリケーションとしているのかを聞くべきです。
ポイントの5つめは、積極的な事業売却です。
以前よりも明らかに加速しました。
マネジメントの何かが変化した証拠です。
財務体質改善のためということが大きいでしょうが、売却資金は何に使うのでしょうか。
取り急ぎ。