「TPPと農協問題」
最近、日本のコメどころに訪問して、
「いかに日本の農家がしいたげられているか」
について、ほぼ一方的に、長時間にわたる講義を受けました。
講師の方の知識を上回るモノを持ち合わせていなかったので、黙って聞くのみ。
それにしても日本の農業は知れば知るほど、歴史がからんでいて面白い。
東京に戻ってきて、今月の証券アナリストジャーナルをペラペラめくると、
山下一仁「日本のTPP戦略ー課題と展望ー」
という論文を見つけました。
面白かったので、ハイライト。
結局、日本は減反により供給を減らすことで、米価を高めに誘導。
- 農家に年間6000億円の補助金を出し、
- 消費者も年間4000億円分高くコメを購入させられている
というもの。
一方、米国や欧州では農家に「直接支払い」という形式でサポートをしています。
したがって、日本で起きているような消費者負担はないというもの。
まあ、これも日本の場合でいえば、農家に1兆円を出してたら同じなわけですが。
(ただ、米国や欧州の直接支払いがどれくらいの規模なのかは記載がありません)
この論文で、興味深いのは農協悪玉説をとっていることです。
流れとしては、以下の通り。
- 米価を高く据え置くことで、農協の販売手数料が高いまま維持され、
- (収入が高めに維持され、競争が促進されないために)兼業農家が維持され、
- 兼業農家はサラリーマン収入を農協口座に預け入れ、
- 農地を転売して得た年間数兆円という売却益も農協口座に預けられ、
- JAバンクや農林中金は発展してきた
兼業農家が滞留することで、戸数も維持でき、政治的にも影響力を発揮してきたと。
こうしてみると、農協の最大の経営資源は、政治力であり、米価から発生したとしてます。
(最近学校で習った話だと農家の影響力は、趨勢を変えるほど大きくないと習ったような)
ただ、この論文で一番おもしろかったのは、
「日本のコメの生産性が1970年以降頭打ちになっていること」
これは、実は日本の減反政策に影響を受けている可能性が大きそうです。
大蔵省は農水省に減反(面積)を迅速に行うため、「収穫を下げる品種改良をしろ」と言ったよう。
ホントか!?とも言えるような内容ですが、生産性が頭打ちなのはデータが示しています。
一方、アメリカは1980年代以降も継続的に生産性は伸び続けています。
こうしてみると、日本の農政と農家が怠慢だったというそしりは免れないのではないかと。
山下氏の結論は、
「国内需要の落ちるのが目に見えている農業はTPPに参加して新規市場を求めろ」
というもの。
所属がキヤノングローバル戦略研究所でなければもっと説得力があったかも。
キヤノンはどうせTPP賛成でしょ。