泉田良輔のブログ

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今あえて天然ガスの議論をするべき時機

エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)

エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)

エネルギー関連で久しぶりに読みごたえのある本でした。

ここまでシェールガス革命というと日本は蚊帳の外。

石井氏は、

「(震災まで)天然ガスの長所は原発を推進したい人たちによって抑えつけられた」

といいます。

本書の天然ガスのパイプラインの顛末も興味深いです。

天然ガスの電源構成の比率が低いのは日本とフランス。

まあ、2国とも原発推進国(日本は当然ながら震災前まで)。

アメリカなんかは既に原発にほとんど興味なし。

GEのイメルトは既に原発には全く興味がないとちょっと前のFTに記事がありました。

自国で天然ガスが出て、パイプラインもあり、熱効率がいいガスタービンがあればそうなりますね。

さて、エネルギー安全保障は常に議論になりますがが、この著者すごく面白いこと言ってます。

「国産エネルギーに依存するほうがリスクが高い」

国産エネルギーに依存して、日本で例えば天災があれば燃料を調達できない。

まあ、震災後は実際にそうでした。

「市場原理の方が自給より安全」

日本国内の一部に何かあっても機動的に輸入できる体制にしておく方がリスクは少ないと。

自国で必要なエネルギーをできるだけ国内に保有しておくというのとは正反対。

本書では、日本の過去の飢饉の例を取り上げています。

東北で大飢饉がおこったときに、多くの死者が出たのは東北だと。

大都市では死者はほんの一部。

地方は平時は自給自足をしているから、外部から食糧を調達するシステムがないと。

大都市は常に食糧を外部から調達するルートがあるため、一部が機能しなければ他から調達できると。

これをして、市場原理の方が自給より安全としてます。

なるほど。

天然ガスを取り上げて、再生可能エネルギーとの組み合わせが良いとしています。

しかし、著者のつまるところの結論は、

「世界人口を数百年かけて大きく減少させる以外に、

長期的に人類の絶滅、あるいは現代文明の崩壊を避ける方法はないと考えている。」

 ということらしいです。

なんとかテクノロジーで解決してほしいものです。