フェアディスクロージャと理想のIR
フェアディスロージャを厳密に守ると発行体は投資家には会う必要がなくなります。
投資家に話せる内容は既に公開されてなければなりません。
したがって、発行体から公式なリリースが出ているはずです。
投資家も公開されている情報をもらいにわざわざ時間を頂戴するのも忍びないですし。
このフェアディスクロージャ原理主義を貫いている会社があります。
そう、あの黄色いロボットでおなじみのファナック。
一時期は上場企業であるにも関わらずホームページも存在しなかったという猛者。
ファナックが今のようなIR方針を貫ぬけるというのは、株式市場が必要ないからでしょうね。
(また、トラウマもあるんでしょうね)
MBOすればと思いますが、経営者もそこまではリスクをとりたくないんでしょうか。
ファナックは極端な例としても、フェアディスクロージャとIRのバランスは難しいと推測します。
発表されていいない情報を伝えるのは論外です。
しかし、何も話さないというのも人としてコミュニケーションとしていまいちですし。
じゃあ、どうするかということですが、こんなのはいかがでしょうか。
発行体がMUST-READSだとおもっている公開情報や参考文献を必ず読んできてもらう。
「それぐらい自分でやれよ」と発行体の方は思われるかもしれませんし、そうでしょう。
ただ、発行体が一番言いたいことを集めた情報というものには意味があるとおもいます。
(そこまでしてあげて読んでこない人には冷たくしても良いんじゃないでしょうか)
そして、事業の構造と戦略について徹底的に議論する。
それならミーティングしても良いよというプロトコルです。
終わった決算の背景を議論することには十二分に意味があると思います。
一方、来月の数字を知ることはルール上無理です。
だとすれば、終わった決算の背景と戦略を議論すること以外にないはずです。
これを実際に行っているのは任天堂です。
かれらは戦略の細部は絶対に語ることはしませんが、考えの基盤は教えてくれます。
おそらく任天堂のIRの評価は一般的にそんなに高くないだろうと推測しています。
しかし、私は任天堂のIRはグローバルスタンダードにかなり近いと思います。
世界の大手はまああんな感じです。
日本と海外の企業のIRで一番の違いは戦略を語っているかそうでないかです。
戦略がある企業には、投資家も細かな数字を聞かなくてもすみます。
その会社が持つ競争優位が維持されているかどうかのチェックですみますから。
その代わり、事業モデルの議論を徹底的にする。
外国株式の運用をしていたころは、
「海外の企業のIRはなんてあっさりしているんだろう。実はあいつら頭悪いんじゃないか。」
などと思ったものです。
しかし、これは若くしてモノゴトの本質を理解していなかったんですね。
本当に競争優位を確立している企業の戦略は極めてシンプル。
複雑に絡み合ったサブシステムの優位性も全体でみると、不思議とシンプル。
おそらく、従業員の隅々まで理解できることも優位性を確立できる要件なのでしょう。
シンプルということは、外部の投資家も理解することが可能だということです。
逆説的ですが、投資家に分かりにくい事業モデルは競争優位は大丈夫?と考えるのも一つ。
戦略を語れない会社のIR資料は必然数字と絵が多くなります。
ここは思い切って、開示情報を少なくして、投資家に考えさせる癖をつけさせる。
「投資家のゆとり教育もおしまいです」宣言はどうでしょうか。
日本の会社があらゆる数字を開示すること自体が信じられないんですよね。
だって、競合企業は必ずみるでしょ。
自分の競合企業がどこまで開示しているかをマネジメントも知るべきです。
日本の企業の相対的な競争力をつけるためには、開示は少ない方が絶対にいいはず。
こういうところ、日本人はバカ正直すぎます。
「短期的には数字は悪化しているが、ビジネスモデルに変化はない。」
こんなコメント日本のマネジメントからぜひ聴きたい!