泉田良輔の考えたこと

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オープンイノベーションのヘンリー・チェスブロウ&ストーリーの楠木建の「モジュラー化の罠」

オープンイノベーションで有名なヘンリー・チェスブロウとストーリーとしての競争戦略で有名な楠木建氏が昔にまじめで興味深い論文を発表しています。垂直統合と水平分業とでも言いましょうか、専門家は違うというポイントがありますが、そう理解するとわかりやすいかと。

インテグラルとモジュラー

チェスブロウと最近変に?有名になってしまった楠木教授の論文。

「モジュラー化の罠ー製品アーキテクチャのダイナミックス」が下の本に含まれています。

>>戦略とイノベーション (リーディングス日本の企業システム第2期 第3巻)

この論文が掲載されている本は2006年出版なのでさして新しくもないが超刺激的。

(もともとの論文は2001年に書かれているが、今回は大幅に加筆修正となっている)

ポイントは製品アーキテクチャはインテグラルとモジュラーを行ったり来たりするという点。

つまり製品アーキテクチャは静的ではなく動的だということ。

そしてモジュラー型からインテグラル型への変化は非常に短い時間でおきるとある。

我が意を得たりという感じだ。

この論文ではHDDが例として取り上げられている

富士通がこのダイナミックスに成功して、東芝が失敗したケースが取り上げられている。

ただ、現実では富士通のHDD事業が東芝に買収されているのは面白い。

さて、実は日本のエレキ産業はこのダイナミックスに大幅に振り回されてきた。

日立の20年スパンのビジネスポートフォリオの変遷を見ていけば分かりやすい。

一言でいうとモジュラー型ビジネスからインテグラル型ビジネスへのシフトだ。

PC、携帯電話、フラットパネルテレビ、HDDから鉄道、発電等へのシフト。

鉄道や発電等のインフラ事業はインテグラル型ビジネス。

技術開発から製造、販売そして販売後のメンテナンスまで一貫している。

しかし、日立が恣意的にこのポートフォリオを選好したというのではなさそうだ。

もともとのインテグラル型ビジネスがモジュラー化して組織がビジネスに合わなくなった。

結果としてとれる付加価値も落ちて、採算がとれず撤退か事業売却となった。

チェスブロも指摘しているが原子炉やメインフレームはクローズド・イノベーションのカテゴリー。

原子炉がインテグラルであり続けるのは、実験や検証が簡単にはできないからであろう。

(大手プラントエンジニアもそう言っていたし、実際技術革新のスピードも遅い)

メインフレームはもともとインテグラル・アーキテクチャであった。

しかし、UNIXやIAサーバ等のオープン化とダウンサイジングで存在感がなくなった。

日立はIPSパネルやプラズマのデバイスを開発・製造し、薄型テレビ事業を行っていた。

当初は薄型テレビ事業はインテグラル型ビジネスであったが、結果としてモジュラー型にシフト。

つまりは日立の事業ポートフォリオは組織にマッチしたインテグラル型だけが残った。

振り子のようにいったりきたりするモジュラーとインテグラル

チェスブロウが言っていることで一番怖いのは、モジュラー型のインテグラル型への揺り戻し。

実はこれは最近そこかしこで起こっている。

一旦モジュラー化した製品アーキテクチャがインテグラル化しているのである。

日本のエレキが見切った事業の中にもこの例が散見される。

インテグラル・アーキテクチャの知見の蓄積は短期間にはできない。

苦しくても事業を続けていれば、インテグラル化の中で勝ちのチャンスがあったということ。

日本の電機産業の失敗か

こうしてみると、日本のエレキは底値で事業売却や撤退をしたかもしれない。

今の世界の潮流はインテグラルとモジュラー組み合わせたものである。

インテグラル型事業は誰にでもできることではない。

一旦インテグラル型事業で成功するとしばらくは付加価値を享受できる。