泉田良輔の考えたこと

ノマドアナリストが株式投資, テクノロジー, エネルギー, FinTech, メディア, サッカーをテーマに.

「電子部品だけがなぜ強い」を冷めた目で見る

電子部品だけがなぜ強い

電子部品だけがなぜ強い

『電子部品だけがなぜ強い』という考え方を少し冷めた目で見てみることにします。

私のあえて意地悪な見方で見ると、こうなります。

昔自分たちのお客さんが世界で幅を利かしていて、それに便乗していた余韻がまだある

となってしまいます。

こういうと、

「電子部品企業では既にソニー、パナソニックなどの取引の比重は少なくなっている」

と答えが返ってきそうです。

しかし、

今ある海外企業との取引や売上は昔の日本のメーカーの実績があったからできたもの

ということもできます。

「日本の半導体は既に競争力を失っているが、電子部品はそれがあるではないか」

との意見も出てくるでしょう。

これに対しては、

「半導体は電子部品業界より競合がより強力で顧客を広げる時間が足りなかった」

ということができるでしょう。

つまりは電子部品も半導体も状況の違いは時間の問題にすぎないということです。

まあ、競合に対して資金力がないというのは半導体事業では一番痛いポイントです。

経営は常に相対評価です。

自らがベストを尽くして100の設備投資をしても、相手が500を投資すれば負けです。

日本人はベストを尽くせば勝てると思いこんでしまう節があります。

自分が相対的に相手に対してどういうポジショニングかを冷静に見るのが苦手です。

インテルはともかくとして、技術力云々というより経営力の問題が大きいと思います。

日本の電子部品業界が半導体業界のように「まだ」なっていないのは

海外メーカーの顧客に製品が受け入れられているという事実があります。

なぜかというと、部品そのものがアナログということがあげられます。

製造工程においても半導体のようにはいきません。

市販の生産設備を製造工程にそのまま投入できないので、手を相当程度いれています。

付加価値があると言いたいところですが、言ってしまうと、これも時間の問題です。

ノウハウをもった従業員が競合に引き抜かれてしまえば、少しずつ技術は流出します。

私がいま一番問題視しているのは技術開発姿勢です。

昔は、ソニーやパナソニックと苦楽をともにしながら新製品を開発したことでしょう。

しかし、今や主要な顧客は海外メーカーです。

しかも、共同で開発するより、おもしろいものができたら持ってこいという関係です。

日本メーカーも同じ姿勢だったでしょう。

しかし、ソニーやパイオニアよりはアップルの方がドライでしょう。

焼き畑農業的な発想で継続的に良いものを生み出せるような経営にはなりえません。

今後さらに海外大手の顧客が同じ姿勢の調達姿勢をとれば、日本の開発力は落ちます。

日本の電子部品メーカーはどうしたらよいのでしょうか。

答えは簡単です。

客と売り先の産業を変えるのです。

民生エレクトロニクスから自動車や産業機械に変えるのです。

顧客の競争力の残っている産業に顧客を変えていくのです。

自動車は電装化のトレンドは続いていますし、電気自動車は電子部品の塊でしょう。

幸い、自動車メーカーの競争力はまだあります(電気自動車になれば分かりませんが)

産業機械で言えば、空調や工作機械は自動車よりも強いと言えるでしょう。

たとえば、日本電産にはこの考え方やディシプリンがあります。

自分たちは部品屋として競争力のある顧客をつかめる事業に徹しています。

HDD向けモーターもデータセンター向けサーバー用で稼いでいることでしょう。

データセンターは今や我々の生活を支えるインフラです。

PC用のモーターも数は出ますが、伸び率とNANDを考えると安心とは言えません。

彼らは民生品を支える事業をしているのではなく、インフラ事業を担っているのです。

日本電産の最近のM&Aは産業向けの事業をしている企業のM&Aがほとんどです。

彼らは消費者向けの事業より産業向けの方が収益が出ると見込んでいるのでしょう。

ロームも同様に最近では産業向け事業を拡大させようとしています。

SiCのパワートランジスタを開発し自動車や産業機器を狙っています。

しかし、国内顧客の売上比率が高かったことと日本の製造工程が重荷になっています。

国内で半導体の前工程をほとんど扱っています。

国内の取引がほとんどで円安であればメリットがありますが、いまはその逆です。

国内の顧客を相手にしていれば為替リスクはほとんどありません。

ところが、海外事業が増えていけば為替リスクによりさらされていくことになります。

電子部品メーカーはすでに円建て取引が少なくなっているとは思います。

しかし、更に少なくなることをリスクとして見ておかなければならないでしょう。

円建ての売上が減り、研究開発の体制が円建ての固定費というのは圧倒的に不利です。

電子部品業界は半導体で起きたことを周回遅れでこれから見に行く可能性があります。